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「夜の街」にぎわい戻れ、中洲のスナックママら奔走中

緊急事態解除から1カ月

手指のアルコール消毒や検温など感染防止策を徹底して営業を再開した中洲のスナック(福岡市博多区)

6月1日の夕暮れ時、福岡市・中洲の雑居ビルで、スナック「Sai」を営む石川樹奈さん(39)は客の来店を心待ちにしていた。この日、福岡県は接待を伴う飲食店への休業要請を解除。約2カ月ぶりに営業を再開する店舗も多く、店の前の通りでは酒店の配達員や黒服の男性スタッフが慌ただしく行き交い、街は久しぶりに活気を取り戻したように見えた。

「店を再開したんだね」「7月になったら行くよ」。石川さんの携帯電話やタブレット端末には常連客からお祝いのメールが何通も届いたが、この日の来店者はわずか3人。その後も客の数は両手で収まる日が続く。「企業は接待を自粛したままだし、交際費も抑えられているようだ」。石川さんは寂しそうに話した。

3人いる女性スタッフの出勤も減らしたままだ。「掛け持ちしている日中の仕事が減り、早く出勤したい」との連絡もあったが、「いつになったら元通りにしてあげられるのか見通せない」。一方でこの日、店には設備のリース代などの請求の訪問や連絡が相次いだ。

新型コロナウイルスの感染防止対策で客や従業員用のマスクや使い捨てコースターなどを買いそろえたが、申請した国の持続化給付金100万円はまだ届かない。運転資金を工面するため、すでに100万円以上の貯金を取り崩したという。

店の再開で新たな課題にも直面した。来店客には感染対策として連絡先の提供を求めているが、「初めての店でよく知らないから」と拒まれることも。換気のため各店が玄関扉を開けて営業するため、カラオケの音や物音が漏れてきて客との会話が途切れてしまうこともある。

それでも各店舗は街のにぎわい復活に向けて地道な努力を続けている。

女性スタッフの給与や固定費の支払いで手元資金が底をつきそうになった店は、再開時に使える金券を発行して現金を確保した。オンラインでの接客を始めた店もある。再開にこぎ着けたクラブやキャバレーはフェースシールドを着用して接客したり、客との間にアクリル板を設置したりして安全性を確保しながら営業方法を模索している。

石川さんの店では常連客が消毒用アルコールを差し入れてくれたり、仕事の合間に消毒液を置く台を作ってくれたりした。休業中は他店のママと連絡を取り、従業員の雇用や客足の動向などを相談し合った。

石川さんは「この世界で働いてきたからこそ築けた人脈が財産。にぎわいが戻るまで、なんとか店を続けたい」と力を込めた。

◇ ◇ ◇

緊急事態宣言解除から1カ月が過ぎた九州最大の歓楽街、福岡市・中洲で街のにぎわいを取り戻そうと奮闘する人々を追った。

中洲、城下で発展 一帯に2300軒

 中洲の事業者や住民でつくる「中洲町連合会」などによると、1600年(慶長5年)に福岡城を築城するため福岡の町づくりを行った際、那珂川と博多川に囲まれた中洲に橋を架けたのが起源とされる。
 1730年に起きた凶作後の振興策として大相撲や芝居を興行したり、料理茶屋を開業したりしたことで歓楽街に発展。現在は居酒屋やスナックなど約2300店が軒を連ねる。
 中洲の不動産会社や酒店に尋ねると、「コロナ禍による廃業は想像していたより少ない」との声が目立つ。給付金などの支援制度や客足の回復具合を見極めていることが背景にあるという。
 ただ、企業の幹部からは「6月下旬の株主総会までは、感染予防の観点からも中洲に通いづらい」との意見も。夏を迎えても観光客や出張客、企業の接待が戻らなければ「倒産が急増するかもしれない」と中洲にある酒店の従業員は危惧する。

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