金与正氏、南北の緊張あおる 文大統領は対話呼びかけ

2020/6/15 17:13
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金委員長から対韓工作を任された金与正氏(右)(2018年9月)=AP

金委員長から対韓工作を任された金与正氏(右)(2018年9月)=AP

【ソウル=恩地洋介】韓国の脱北者団体がまいたビラを巡り、北朝鮮が韓国との緊張をあおり続けている。主導する朝鮮労働党第1副部長の金与正(キム・ヨジョン)氏は武力挑発も辞さない姿勢を見せる。韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は「南北関係を再び止めてはならない」と対話による解決を訴えた。

金与正氏の韓国攻撃は、金正恩(キム・ジョンウン)委員長が授けた任務のようだ。与正氏は13日の談話で「金委員長と国家から権限を付与された」と明かした。開城(ケソン)の南北共同連絡事務所を破壊すると予告し「南朝鮮(韓国)と確実に決別する時が来た」と威嚇した。

北朝鮮は以前から脱北者団体のビラに極度の嫌悪感を示し、2014年には韓国側に銃撃を加えたことがある。米国の反対に遭って南北経済協力を進めなかった文政権へのいらだちも鬱積している。

韓国に対し、経済制裁や新型コロナウイルスでくすぶる内部の不満をぶつけると同時に、制裁緩和への行動などを迫る思惑がありそうだ。危機をあおり、一転して対話をよびかける手法を過去にも繰り返した。事実上のナンバー2の指揮は、文政権への強い圧力となる。

文大統領は15日の会議で、18年に金正恩氏と署名した宣言文に触れ「平和の約束は南北が忠実に履行しなければならない」と述べ、挑発の自制を北朝鮮に呼びかけた。経済協力を念頭に「南北が自ら決定し推進できる事業を探して実践したい」と対話の持続へ努力する考えを示した。

15日は00年に金大中元大統領と金正日総書記が南北共同宣言に署名して20周年の節目だった。文氏は当初、南北融和の成果を披露する方針だったとみられるが、会議では「重い気持ちで20周年を迎えることになった」とも語った。

韓国政府はこれ以上、北朝鮮を刺激しないよう対応策に苦慮している。脱北者団体が予告する25日のビラまきを阻止するため、無理筋ともいえる法解釈で団体を告発し、法人格を取り上げると表明した。与党内では批判ビラを禁ずる法整備を求める声が強まっている。

韓国政府は北朝鮮軍の武力挑発を警戒しており、14日に国家安全保障会議(NSC)を開き対応を協議した。金与正氏は報復行動の行使権を軍に委ねると指摘しており、15日付の朝鮮労働党機関紙「労働新聞」は「革命強軍は断固たる措置を開始する」と主張した。

ワタリガニ漁が最盛期の黄海で、北朝鮮側が漁船保護を名目に海上の境界線である北方限界線(NLL)を侵犯する可能性などが取り沙汰されている。韓国紙大手の朝鮮日報によると、韓国軍は14日に軍事境界線近くで射撃訓練をする朝鮮人民軍の様子を捉えた。

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