株のプロも出し抜ける 日本の個別株投資の利点
ろくすけさんの勝てる株式投資入門(5)

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2020/6/17 2:00
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株式投資で3億円を超える資産を築き、アーリーリタイアしたブロガーのろくすけさん(ハンドルネーム)。会社員投資家の夢を実現した実在のスゴ腕投資家が、会話形式のフィクションストーリーを通して、株式投資の取り組み方やノウハウをやさしく解説していきます。

●ろくすけ 実在する本連載の著者。人気ブログ「ろくすけの長期投資の旅」を運営。
●ゴロー 大学院を修了後、化学メーカーに就職して1年目の青年(架空)。旅先で出会ったろくすけさんに師事するという設定。
●ナナコ ゴローの妹(架空)。大学で経営学を専攻している。兄と一緒にろくすけさんに株式投資の基本を学ぶという役どころ。

前回にろくすけさんから、株価指数に連動するインデックス型投資信託のデメリットと、個別株投資のメリットを学んだゴローとナナコ。個別株を売買する前に、世界全体の株価指数に連動するインデックス型投信を積み立て投資して100万円の元手を貯めようと提案され、新たな疑問が湧いたようです。

ゴロー:少子高齢化が進む日本の経済は低迷が否めない。だから、日本株の指数ではなく、世界経済の拡大の恩恵を受ける世界全体の株価指数に連動する投信にした方がいいということですよね。それなら、個別株の投資でも、日本ではなく海外の企業の株を取引した方がいいのではないですか?

ろくすけ:ゴロー君が、そう疑問を抱くのも無理はない。日本の人口はこれから急減するからね。一方で他国、例えば米国では、現在3億3000万人の人口が40年後の2060年に4億人に増えると推定されている。自国市場の拡大が確実視される米国企業の株の方が魅力的に映るだろう。

もっとも、日本経済の先行きに対する不安は、既に多くの日本企業の株価に織り込まれている。また、日本企業が相手にする市場は国内だけではない。日本以外の国・地域でも、成長機会を求めることができる。実際、グローバルに活躍している企業はたくさんある。

■日本は課題先進国

ナナコ:私も中国を旅行した時、ユニクロが現地に根付いていることを実感しました。自動車や電子部品の製造に関わっている日本企業は、国際競争力を依然として維持しているとも聞きます。

ろくすけ:そうだね。それに日本企業の海外展開が増えるにつれて、それをサポートする仕事も生まれる。例えば、海外赴任者の住環境の確保や留守宅の管理を手掛けるリログループ(8876)のような企業が業績を伸ばす。

ゴロー:そうか。株式投資でもそうした新たなニーズにいち早く気付けば、有利になりますね!

ろくすけ:それは、私が話そうとしていたことの一つだ。ここで日本株の投資で、私が意識している3つのポイントを伝えよう。1つ目は、日本が課題先進国であることだ。先進国の中で日本は少子高齢化が最も速く進んで、医療や年金をはじめとする社会保障制度が揺らいでいる。高度成長期に整備されたインフラは耐用期限を迎え、空き家も増えていく。労働者の数が減っていく中で、経済規模の縮小を抑えようとすれば、社会のあらゆる面において生産性を高めていく必要もある。

ナナコ:課題が山積みですね。私はこれから就職活動をして社会に出ていくというのに……。

ろくすけ:でも、それは経済が成熟する過程を日本が他国に先駆けて経験するということだ。その経験をうまく生かせば、「課題解決先進国」として他国のモデルになれる。そのチャンスでもある。

ナナコ:捉え方次第で希望が持てそうですね。

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ろくすけ:株式投資でも、社会的な課題の解決や持続可能な社会の形成に貢献する企業を選ぶといい。多くの人の助けになる事業は価値を生み出し、収益の拡大につながる。その恩恵を投資家も享受できる。就活でもそうした観点で企業を見ていくといいだろう。

ところでゴロー君、社会的課題の解決につながる事業を行っていると感じられる企業の例を挙げてみてくれないかな?

ゴロー:そうですね……。あ、「女性だけの30分健康体操教室」と銘打って女性専用のスポーツ施設を運営しているカーブスホールディングス(7085)はどうでしょう? ナナコ、ヤエコおばさんは腰の具合が良くなかっただろう? この前、街で会ったんだけど、見違えるように元気になっていた。聞いたら、「カーブスに通っている」と言ってたよ。

ナナコ:家の近所にあるカーブスでも、高齢の大先輩方がワイワイとやっているのを目にするわ。

ろくすけ:カーブスの会員は、ダイエットよりも、健康を維持して老化を防止したり、病気を予防したりすることを主な目的として通っている。つまり、カーブスは、病院の待合室で「痛い、痛い」なんて言いながら世間話をしていた中高年の女性たちに対して、自発的に仲間と楽しく健康づくりに取り組める場を提供したわけだ。他のフィットネスクラブだと、運動経験のない人は、ちょっと尻込みしてしまう部分があるからね。カーブスは、社会的にすごく意義のある事業を展開していると言える。

■日本企業ならではの利点も

ろくすけ:では、ここで日本株投資の2つ目のポイントを示そう。それは、日本企業ならばその事業活動を身近に感じられる点だ。カーブスのように、普段の生活や仕事の中から株式投資の対象になる企業に関するヒントが得られることは多い。その場合、投資のプロよりも早く有望株を発見することも不可能ではない。

かつて全米ナンバーワンのファンドマネジャーとして名を馳せた伝説の投資家ピーター・リンチは、「アマチュアにはアマチュアならではの強みがある」と指摘してこんな言葉を残している。「ウォール街が気づいていないチャンスを探し、あとでウォール街に実証させる」と。

米国の伝説のファンドマネジャー ピーター・リンチ

 米国でも屈指の運用成績を残したファンドマネジャー。米資産運用大手フィデリティの旗艦ファンド(投資信託)だった「マゼラン・ファンド」を1977年から13年間運用。平均で年率29%のリターンを上げ、純資産総額を700倍に増やした。
 アマチュアの個人投資家向けに自身の投資法を解説した著書『ピーター・リンチの株で勝つ』(ダイヤモンド社)を出版。同書で「アマチュアの個人投資家はプロのファンドマネジャーに対して優位性を持っている」と説き、「(個人投資家が)自分の働いている業界の変化や、消費者としての情報を意識的に利用すれば、10倍になる株を見つけられるだろう」と力説した。
 同書を読んで、リンチ流の投資法を実戦している個人投資家は日本にも多い。中には、リンチの言った通りに実際にテンバガー(10倍株)をものにして、億単位の資産を手にした投資家もいる。

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ナナコ:面白いですね! プロといえども、全ての銘柄に精通しているわけじゃないでしょうし、日本企業を対象にした個別株投資なら、確かに個人投資家でも独自に情報を集めて、プロを出し抜くこともできそう。

ろくすけ:日本の企業なら、株を購入した後に動向もフォローしやすい。経営者との距離も近く感じられる。メディアで目にする機会も多いからね。ただ、経営者は企業の大事なかじ取り役だから、間近で話しぶりや考え方をチェックしたい。それには株主総会に参加するといい。総会では経営者が議長として議事を進行するから、質問して反応を見ることもできる。

ゴロー君の場合、平日に開催される株主総会に参加するのは難しい面もあるだろう。企業によっては決算説明会の動画をホームページで公開しているから、株を買う前にそれで経営者の話しぶりをチェックすることを勧めるよ。

ゴロー:名経営者の目の覚めるような話を聞きたくなりました!

■投資を通じて日本を豊かに

ろくすけ:いい姿勢だね。では、3つ目のポイントを説明しよう。それは、日本に必要な企業に投資すれば、その企業の成長を通じて日本を豊かにできる点だ。

日本の社会的課題を解決している企業、社会にとって価値のある企業には適正な価格、つまり株価を付けてあげる。それが投資家の大切な役割だ。その株価の合計値である時価総額が増えて信用が高まると、企業には様々なメリットが生じる。新株の発行や融資で資金を調達する場合に、有利な条件で調達しやすくなる。優秀な人材も集まりやすい。ビジネスでも有利な条件で取引できる。

こうして価値のある企業は強さを増していく。個人投資家はそのお手伝いをできるわけだ。そして社会にとって価値のある企業が成長すればするほど、日本の社会全体も豊かになっていく。

ナナコ:すてきな好循環ですね。個人投資家もその一翼を担っているのかぁ。でも、その循環がうまく回らない企業もありますよね?

ろくすけ:鋭いね。株主に従業員、取引先。企業を取り巻く利害関係者を総称してステークホルダーというんだけど、企業が価値を生み出し続けるには、ステークホルダーへの配慮が欠かせない。

昔から伝わる近江商人の経営哲学に「三方よし」がある。「商売において売り手と買い手が満足するのは当然のこと、社会に貢献できてこそ良い商売と言える」という考え方だ。企業が存続するには、このように各ステークホルダーを意識するバランス感覚も大切だ。

先に話したように、日本企業なら深い情報も集めやすい。詳細な情報が手に入れば、「今は規模が小さいが、将来有望」と思った企業に投資することも可能になる。日本に貢献する「未来の大企業」に投資する。すごくロマンがあると思わないか?

ゴロー:いいですね。応援したくなります!

ろくすけ:では、次は具体的にどんな投資をしていったらいいかを話していく。今日は遅いから、またの機会にしよう。

(次回に続く)

今回のまとめ
日本企業の個別株投資なら、プロを出し抜くことも可能

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