メセナ協、コロナ禍の芸術文化支援へ
新型コロナウイルス感染症対策で芸術文化活動が深刻な危機に見舞われる中、企業メセナ協議会が支援のための寄付を募っている。2011年の東日本大震災のあと設けられた「GBFund(芸術・文化による災害復興支援ファンド)」を拡充、感染症による被害を地震などと同様の「災害」と認定する形で、継続的に支援していく。

活動自粛を求められた芸術文化団体や個人に対する支援はこれまで民間が素早い対応を見せてきた。稲盛財団は4月末に支援を発表、当初予定を上まわる3億5千万円の支援を既に行った。こまつ座、シス・カンパニー、日本フィルハーモニー交響楽団、日本舞台芸術振興会など10団体に各1千万円、これに500万円、250万円の支援を合わせ、計74団体を緊急支援した。映画のミニシアター・エイド基金、演劇の小劇場エイド基金をはじめ、さまざまな団体や個人がクラウドファンディングを実施。官民の資金拠出からなる芸術文化振興基金も「文化芸術復興創造基金」を5月に立ち上げている。
こうした中、芸術文化と企業とをつなぐ中核団体であるメセナ協も支援に乗り出す。GBFundの枠組みで、芸術文化各界を正常化していく活動に加え、損失を受けた団体や個人をも支援する。東日本大震災の直後にできたGBFundは、迅速な支援で被災地の文化活動を支えたことで知られる。今回、対応の遅れが残念だが、強固なネットワークを生かし、支援を強化してほしい。
同協会が119の会員企業・団体に行ったアンケート調査によると、5月の段階でメセナ活動に影響が出るとの回答が7割を超えた。一方で収束後の再開を予定するところが過半であり、企業のメセナ活動は底堅いといえるだろう。同協会理事で、ニッセイ基礎研究所の吉本光宏研究理事は、損失への緊急支援、活動再開への支援、コロナ後の芸術文化への後押しという3段階の取り組みが必要になると説いている。
(内田洋一)