香港人材受け入れ論点に 自民、東京の金融強化を提言

2020/6/13 2:00
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金融センターの香港からの人材受け入れが論点に浮上した。中国が香港の統制を強める「香港国家安全法」の制定方針を決め、香港に国外移住の動きがある。自民党の経済成長戦略本部(本部長・岸田文雄政調会長)は12日、東京の金融機能強化を盛り込んだ成長戦略の提言骨子案を示した。

自民党の提言は7月に政府が決める経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)と成長戦略に向けて月内に出す。

金融機能の強化のため銀行の規制緩和や環境、社会、企業統治に配慮した「ESG金融」を推進する。木原誠二事務局長は記者団に「香港の状況もある。東京を金融センターとして復活させることが重要だ」と語った。

自民党は2019年の参院選公約で「東京の国際金融センター化を推進する」と掲げた。

骨子案は新型コロナウイルスの経験を踏まえ、テレワークなど新たな働き方の定着も訴えた。次世代通信規格「5G」の環境整備など、デジタル化にも触れた。

安倍晋三首相は11日の参院予算委員会で「香港を含め専門的、技術的分野の外国人材を受け入れてきた。引き続き積極的に推進する」と答えた。

菅義偉官房長官は12日の記者会見で、香港などの高度人材受け入れを巡り「何ができるか引き続き検討したい」と述べた。茂木敏充外相は「中長期的な視点で関係省庁と連携しながら積極的に推進していく」と話した。

香港紙、明報によると5月25~29日の世論調査で37.2%が「海外移民を考えている」と回答した。関係が深い英国や台湾が支援の構えをみせる。

■生産性高め、給与上げよ

デービッド・アトキンソン・小西美術工芸社社長

30年前に来日してゴールドマン・サックスのアナリストとして活動した。当時から日本は「世界の金融センターを目指す」とうたっていた。インフラさえ整えれば海外から人材が集まるというのは甘い考えだ。

問題は2つある。日本企業は生産性が低いせいで、香港やシンガポールなどと比べて給与水準で見劣りする。

日本の名目GDP(国内総生産)は世界3位だが、それは単に日本の人口が多いだけだ。この30年でGDPはほとんど伸びていない。日本で仕事をする魅力に乏しい。

もう一つは仮に海外から優秀な人材を招けたとしても、日本は中小企業の比率が高すぎて活躍の機会が少ない。日本の産業政策は中小企業を過剰に保護している。企業の多さを日本経済の活発さと勘違いしている。

これではスケールメリット(規模の経済)が働かない。最先端の技術や海外の人材を導入する動機づけもない。

日本は金融センターの誘致がお金の問題ではないと認識すべきだ。自国の産業構造にメスを入れない限り、受け皿をつくっても人が集まらない。

■株式市場の改革必要

野木森稔・日本総合研究所副主任研究員

日本が香港の金融人材を活用したいのであれば中国本土と密接な金融制度を整える必要がある。香港が金融センターとして発展したのは閉鎖的な中国市場の玄関口だからだ。絶妙な立地で得られた恩恵を日本市場でも再現しないと人が来ない。

海外投資家が中国株に投資する際、香港市場と本土市場を結ぶ相互取引(ストックコネクト)の仕組みをよく使う。日本が香港の機能を代替するには東京証券取引所と上海証券取引所とのストックコネクトを導入するのも一つの手だ。

東京をアジアの金融センターと比べた場合、台北よりは優位性がある。台湾ドルより日本円の方が流通量が多く、為替取引で柔軟だ。

シンガポールは複数の外貨に連動する「通貨バスケット制」をとる。香港ドルほどではないが米ドルと連動性が強い。為替の金融機能はシンガポールに軍配が上がる。

シンガポールに勝つなら国内の株式市場を改革しなければならない。海外企業の上場を促す戦略が考えられる。日本の上場審査は従業員の労働基準などが厳格で細かく、他国から敬遠される一因とされる。

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