「電車の換気」窓開閉どうする? 夏控え鉄道各社困惑

2020/6/12 9:12
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換気のため窓を開けて運行する西武池袋線(9日、東京都豊島区)

換気のため窓を開けて運行する西武池袋線(9日、東京都豊島区)

暑くなる夏を控え、鉄道各社が電車内の換気に悩んでいる。新型コロナウイルスの感染防止へ換気徹底が求められる一方、窓を開けると冷房効率が下がり、熱中症リスクが高まる。専門家は「換気と冷房を両立する工夫が必要だ」と指摘する。

6月上旬の平日朝、京浜急行品川駅(東京・港)に電車が到着すると、開いたドアから職場に向かう会社員らが一斉に吐き出された。多くの窓が閉まったままの車内では時折、「空調設備による車内換気を行っています」とアナウンスが流れた。乗客の男性会社員は「窓が閉まっていると感染が不安」と漏らしたが、別の男性は「窓を閉めて冷房を利かせた方がいい」と話していた。

新型コロナは「3密」(密閉、密集、密接)の条件下で感染リスクが高まるとされ、西武鉄道など首都圏の多くの鉄道会社が換気のため、車両の窓を開けて運行している。京急も当初は窓を開けていたが、気温が高くなってきたため5月19日以降は窓を閉めた。京急の広報担当者は「空調設備が外気を取り込む仕組みになっており、2~6分あれば車内の空気が入れ替わる」と説明する。

鉄道車両メーカーによると、電車内の換気は駅に停車する際のドアの開閉と車内の空調設備を組み合わせて行うのが一般的だ。ただ、空調機能は車両によってまちまちで、JR各社や民間鉄道会社の団体で構成する「鉄道連絡会」は新型コロナ対策のガイドラインで、空調で換気が十分できない場合は窓を開けるなどの対応を求めている。

窓を開ける場合、問題となるのが車内の気温上昇だ。空調装置メーカーの担当者は「窓を開けた状態での冷房使用は想定していない」と明かす。暑い外気が窓から吹き込む状態では冷房装置に負荷がかかりすぎ、故障を防ぐため自動的に出力が弱まる仕組みが一般的という。

仙台市地下鉄の南北線は窓を開けて運行しているが、冷房の利きをみながら窓を閉める方針だ。市交通局の担当者は「窓を開けたまま冷房を使うと、車内の気流が乱れ、冷気が行き渡らなくなる可能性がある」。

対応を決めかねる鉄道事業者も多い。背景には乗客からの強い要望がある。大阪メトロでは3月、ホームページの問い合わせフォームに「窓を開けてほしい」との要望が約150件寄せられた。同社の路線は駅間が比較的短く、2~3分おきにドアが開閉するため、窓を開ける必要はないと判断しているが、広報担当者は「お客様の要望を考慮し、今後も窓を開け続けたい」と話す。

感染症に詳しい関西福祉大学の勝田吉彰教授は「感染防止だけを考えると、窓は開けた方が望ましい」としたうえで、「窓を開けられない事情がある場合は、車両ごとの換気機能を十分に確かめ、空調の風の向きや強さを工夫するなどして、どうしたら乗客が安全で快適に過ごせるか模索する必要がある」と話している。

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