5月の輸出船受注残、3割減 新型コロナで商談鈍く

2020/6/11 19:53
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日本船舶輸出組合(東京・港)は11日、5月末の手持ち工事量(受注残)が約1600万総トンで前年同月よりも33%減ったと発表した。1997年8月末以来の低水準だ。荷動きが低調なうえに、新型コロナウイルスの影響で商談も鈍っていることが背景にある。

5月はばら積み船などの契約があった

5月の輸出船契約実績(受注量)は前年比42%減の30万総トンだった。4カ月連続で前年実績を下回っている。減少率が70%減だった4月などに比べれば回復はしているが「依然として厳しい状況は変わらない」(大手造船会社)という。船種別ではコンテナ船が1隻、ばら積み船が3隻、タンカーが2隻だった。

競合する中国や韓国の造船大手は大型案件の受注で先行している。液化天然ガス(LNG)運搬船では6月に入り、現代重工業など韓国の造船大手3社がカタールの国営エネルギー会社から合計2兆円というLNG船の大規模な初期契約を結んだ。発注量は100隻を超え、造船業界では過去最大の規模だ。

この受注は造船の生産能力を確保する「スロット契約」と呼ばれる方式で、20年から24年にかけてLNG船の仕様や建造量、納入金額を詰める。この方式について造船大手の幹部は「1社で大きな建造量を持たない日本勢は受注しづらい。先の建造量を確保しなければならないため、リスクもある」と指摘する。

カタールの案件では、すでに中国も3千億円規模の受注に成功している。国際的にも技術力を認められつつある中国にとって、海外での過去最大の受注となった。

LNG船に搭載するタンクの状況を世界全体でみれば、韓国勢が強い「メンブレン」という角形が主流になっている。これに対して日本企業は横揺れなどに強い球形の「モス」を得意としている。技術面での信頼性を強みに、残るカタール案件での受注を目指す。

しかし世界的に発注が鈍い状況は続きそうだ。6月上旬に予定されていたギリシャの大型の造船見本市「ポシドニア」は10月下旬に延期となり、多くの商談の機会が先延ばしされている。

日本の造船大手は19年度、赤字に陥った企業が多かった。国内2位のジャパンマリンユナイテッド(JMU、横浜市)の19年度業績は390億円の最終赤字で、20年度の予想は未定。三井E&Sホールディングスの19年度の船舶事業は29億円の経常赤字だった。各社とも、先行きも厳しいとみている。

国内1位の今治造船とJMUは10月をめどに商船の共同出資の設計・営業会社を設立する。現在は各社が緩やかな業界再編を志向しているが、厳しい状況が続けば買収や合併といった業界地図を塗り替える動きが浮上する可能性もある。

(西岡杏)

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