米朝首脳会談から2年 北の核・ミサイルの脅威増大続く

北朝鮮
2020/6/11 18:00
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【ソウル=恩地洋介、ワシントン=永沢毅】シンガポールで史上初の米朝首脳会談が開かれて12日で2年を迎える。金正恩(キム・ジョンウン)委員長は再び核・ミサイル開発に注力する意志をみせ、核活動を着実に継続。非核化交渉の再開は11月の米大統領選後に持ち越される見通しだが、両者の駆け引きのさなかにも脅威の増大は続く。

「北朝鮮が前向きな措置をとるまでは、強力な圧力政策を維持する」。ナッパー米国務副次官補は4日のオンラインイベントでこう語った。しかし数々の分析からは非核化に逆行するかのような北朝鮮の動きが浮かぶ。

北朝鮮最大のウラン鉱山のある南部・平山(ピョンサン)。米シンクタンク戦略国際問題研究所(CSIS)は5月、ここでウラン精鉱を製造する施設が稼働中との分析結果をまとめた。ウラン精鉱は核兵器に使われる濃縮ウランの原料で、CSISは「将来の完全な非核化にはこの施設の解体が不可欠」とする。

300以上の施設が集積する核開発の主力拠点である北西部の寧辺(ニョンビョン)も活動が続く。CSISは2月、放射性廃棄物の搬出作業が行われた兆候があると報告。衛星写真を解析した結果、ウラン濃縮施設につながる軌道に、搬出に使われたとみられる貨車3台が止まっていた。

「世界は遠からず、新たな戦略兵器を目撃することになる」。金正恩氏は2019年末から、こう公然と核・ミサイル開発への意欲を語り始めた。自らも出席した5月末の朝鮮労働党中央軍事委拡大会議では「核戦争抑止力をさらに強化するための新方針」を示した。

トランプ米大統領の黙認姿勢もあって、ミサイル開発は昨年から既に本格化。3月には短距離弾道ミサイルを4回発射した。実験を繰り返した昨年よりも性能を高めており、韓国軍の迎撃網をかいくぐる能力があるとみられる。核を搭載できる高性能ミサイルを実戦配備することで在韓米軍の攻撃を抑止する狙いだ。

韓国軍の警戒は潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の発射に向けられている。北朝鮮東部の新浦にある造船所で、ミサイルを水中から発射する装備が確認されている。米の北朝鮮分析サイト「38ノース」は北朝鮮が最近、造船所で模擬ミサイルの試射実験を実施した可能性を指摘している。

19年10月に物別れに終わった非核化交渉を再開する環境は整っていない。11月に大統領選を控えるトランプ氏は新型コロナウイルスへの対応や、経済活動の正常化など国内課題が最優先だ。対外的には中国批判に集中している。短期で成果が見込めない北朝鮮に政治的資源を振り向ける余裕はない。

「彼が元気であるよう望む」。一時は健康不安説が流れた金正恩氏にトランプ氏はこう呼びかけて良好な関係をアピールした。再選を果たして交渉を仕切り直すまで、現状維持が得策との判断が透ける。

北朝鮮側も米国のこうした姿勢を見越し、対話姿勢を封印している。金正恩氏の妹、金与正(キム・ヨジョン)朝鮮労働党第1副部長は3月に出した談話で「両国間で均衡が維持され、公正さが保障されてこそ対話を考えることができる」と交渉の早期再開には慎重な考えを示した。

米大統領選まで核・ミサイル能力の向上を優先し、選挙後の米国の態度変化を見極める構えとみられる。実際、北朝鮮は過去に選挙後の米政権を狙いすまして、挑発行動を繰り出した。

オバマ前大統領が2期目に入る直前の12年12月には人工衛星を名目にした長距離弾道ミサイル「銀河3号」を発射。トランプ政権の発足直前の17年1月には金正恩氏が新年の辞で「大陸間弾道ミサイル(ICBM)の試射の準備が最終段階にある」と宣言した。

もっとも、大統領選は北朝鮮にリスクになり得る。米民主党で大統領候補の指名を固めたバイデン前副大統領はトランプ氏によるトップダウンの首脳外交に批判的だ。

トランプ氏は金正恩氏と3回の会談に応じた。「前提条件なしに会うことはしない」と言うバイデン氏は大統領に当選すれば、北朝鮮にとってはより難しい交渉相手になる可能性もある。

北朝鮮は最近、韓国の脱北者団体が飛ばした体制批判のビラに反発し、南北間の緊張を高める新たな動きを見せている。文在寅(ムン・ジェイン)政権をひき付けて米朝対話に利用する意図なのか、経済難にあえぐ内部の統制のためなのか、各国当局も注目している。

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