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FRB、中長期金利抑制策を検討 経済復元は23年以降

(更新)
パウエルFRB議長は米経済の復元には長期間かかるとの見通しを示した=AP

【ワシントン=河浪武史】米連邦準備理事会(FRB)は10日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で、少なくとも2022年末までゼロ金利政策を維持する方針を表明した。雇用回復に時間がかかり、米経済の再生も23年以降にずれ込むと警戒する。米国債の大増発で長期金利に上昇懸念も浮上しており、新たな金利目標など3つの追加策を検討する。

「2000万人以上の雇用が失われ、回復の道のりは長い。22年まで利上げはない」。パウエル議長は10日の記者会見で、ゼロ金利の長期据え置きを表明した。同日のFOMCでは参加者17人が3年間分の政策方針をそれぞれ提示し、15人が「22年末までゼロ金利を維持する」とした。

5月の米失業率は13.3%と前月(14.7%)から改善した。パウエル議長も「労働市場は底入れした可能性がある」と話したが、FOMCは20年10~12月期の失業率が9.3%と高止まりすると予測した。22年末でも5.5%と、コロナ危機前の3~4%台に戻るのは23年以降とみる。

米経済は4~6月期の成長率が年率換算で40%ものマイナスになると予測され「これまでで最も過酷な落ち込みとなる」(パウエル氏)。7月以降は持ち直しに転じるとみるが、感染第2波などのリスクも拭えず、先行きは「不透明感が極めて強い」と指摘した。

「政策金利が下限に達した現在、金融政策をどう運営するか。今回の会合でも(ゼロ金利を長期間続けると約束する)フォワードガイダンスと資産購入という手段を議論した」。パウエル議長は冒頭発言で、追加策に言及してみせた。

「フォワードガイダンス」は08年の金融危機後に採用したことがあり、11年には声明文にゼロ金利を2年続けると明示した。今回も22年末までのゼロ金利維持を表明したが、あくまで「政策見通し」で公式な約束ではない。FOMC内には「完全雇用と物価目標を1年間続けて達成できればゼロ金利を解除する」と明記する案がある。

量的緩和の拡大も検討する。10日のFOMCではこれまで「必要量」としていた米国債の購入規模を月800億ドル(約8兆5千億円)、住宅ローン担保証券(MBS)は同400億ドルと新たな目安を示した。足元の米国債の購入量は1日40億ドルで、ペースそのものは変わらない。目標を明示したのは、先行きの緩和拡大に備え「発射台」の数値をつくるためだ。

「先行きの新たな景気動向をにらみ、イールドカーブ・コントロール(YCC)は次回以降も議論する」。パウエル議長は微妙な言い回しで、日銀のように長期金利に誘導目標をつくるYCCの採用も示唆した。FRBが警戒する「新たな動き」とは、米国債の大増発による利回り上昇だ。

米政権と議会はすでに3兆ドル弱の新型コロナ対策を発動。財政赤字は4兆ドル規模と前年の4倍に膨らむ可能性がある。国債増発で赤字を埋めるしかなく、市場には常に金利上昇圧力がかかる。米10年物国債利回りは5日、一時2カ月半ぶりの水準に上昇していた。

パウエル氏は「利回り曲線に沿って、金利目標を定める」ことを検討していると表明した。日銀は10年債利回りをゼロ近辺にする誘導目標を持つが、FRBは1年物の短期国債(TB)や5年物国債など、中短期の利回りにいくつか上限目標を置く案を検討する。

念頭に置くのはFRBが自ら1940年前後に取り組んだ「国債管理政策」だ。第2次世界大戦の戦費調達に協力するため、FRBは長期金利の上限を2.5%と定め、3カ月物と1年物にも誘導目標を設定。大量の国債を買い入れて中長期金利を抑え込んだ。

一方、今回のFOMCでマイナス金利政策の導入を検討する参加者はゼロだった。銀行など間接金融が中心の欧州や日本と異なり、MMF(マネー・マーケット・ファンド)の存在が大きい米国でマイナス金利を導入すれば市場に混乱が広がりかねないとの判断もあるとみられる。

「生活者が安全を確信しなければ経済は完全回復しない」。ナスダック総合株価指数が最高値を更新するなど株式市場には早期の景気回復に楽観論も広がるが、パウエル議長は米経済の復元には長期間かかるとの見通しを示した。FRBは実体経済と金融市場をともに制御する難しいかじ取りを求められている。

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