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豊島逸夫の金のつぶやき

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緩和策が効かなくなった株式市場

2020/6/11 10:37
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「利上げは考えていない。利上げを考えることも考えていない」

米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は、たたみかけるごとく語り、ゼロ金利維持の姿勢を強調したかったのだろう。同時に発表されたFRB経済見通し最新版では2022年までゼロ金利継続が確認された。さらに金利上昇を抑え込む米国版イールドカーブ・コントロールまで実際に検討されたもようだ。

これを受け止める株式市場の心理は複雑だ。それほどに米国経済見通しは厳しいのか、と勘繰ってしまう。事実、記者会見で、最新雇用統計の劇的改善について問われ「歓迎すべきことだ。とはいえ、正直に申しあげれば、雇用情勢は厳しい」と「本音を語る」口調で述べている。FRB経済見通しでも、2022年の失業率予測が5.5%と記された。コロナ前の4%割れの史上最低水準に戻るまでの道は遠い。一時帰休扱いの人たちが失業者扱いとなる事例も増えそうとの見立てだ。

そこで注目は株式市場の反応だ。これまでの例では、パウエル議長が悲観的に語るほど、市場の追加緩和期待が強まり、株価は上昇することが多かった。しかし、それも程度問題で、ここまで弱気の見方を示されると、市場は悲観論にまともに反応して売りを加速させるようになるものだ。

ときあたかも、株式市場では過熱感が意識され、利益確定売りの出口を模索している地合いだ。10日のナスダック総合指数は過去最高値を更新して1万の大台を突破したものの、ダウ工業株30種平均は282ドル下げた。米アップルや米アマゾン・ドット・コムは買われており、まだら模様の展開ともいえよう。

冷静に見れば、パウエル・バズーカの多くはいまだ実行されていない。目玉の中小企業向けにFRB(中央銀行)が融資するという「奇策」も、融資条件など細部の詰めに手間取り、いまだ始まっていない。社債購入も、やっと少額での社債ETF購入が開始されたが、本番はこれからだ。FRBが社債を購入した場合には、企業名と購入額を開示することになっているが、いまだ発表はない。財政が危機的な地方自治体支援のための地方債購入も、実行例は、まだイリノイ州の1件だけである。

しかし、市場は先取りして、「マネーじゃぶじゃぶ感」の「マネーイリュージョン」のごとき感覚で株買いを進めてきた。そのうえで、今回の米連邦公開市場委員会(FOMC)ではさらなる追加緩和を期待していた。

だが、FRBの「金融政策の道具箱」の中身はほぼ尽きている。パウエル議長が「財政政策の受容性」を訴えれば、「金融政策の限界」が指摘される。パウエル依存症の症状を呈していたマーケットは、次のよすがを、トランプ米大統領に求め始めた。大統領選挙を視野に、株価下落を誘発するごとき発言は控えるだろう、との希望的観測である。いずれにせよ「政策頼み」の構図は変わらない。

法人税21%から28%への増税を唱えるバイデン候補の支持率が既に上昇中だが、トランプ候補との差がさらに開くことになると、株価反騰の潮目が変わるキッカケになりそうな展開である。

豊島逸夫(としま・いつお)

 豊島&アソシエイツ代表。一橋大学経済学部卒(国際経済専攻)。三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)入行後、スイス銀行にて国際金融業務に配属され外国為替貴金属ディーラー。チューリヒ、NYでの豊富な相場体験とヘッジファンド・欧米年金などの幅広いネットワークをもとに、独立系の立場から自由に分かりやすく経済市場動向を説く。株式・債券・外為・商品を総合的にカバー。日経マネー「豊島逸夫の世界経済の深層真理」を連載。
・ブルームバーグ情報提供社コードGLD(Toshima&Associates)
・ツイッター@jefftoshima
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