犯罪被害者支援に地域差 条例制定は21都道府県

2020/6/9 17:50
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犯罪被害者遺族の女性は現在、自治体の条例づくりの支援に関わる(神奈川県)

犯罪被害者遺族の女性は現在、自治体の条例づくりの支援に関わる(神奈川県)

犯罪被害者や、その家族の支援のための条例を制定している都道府県は今年4月時点で21と全体の4割にとどまることが9日、政府が閣議決定した2020年版の犯罪被害者白書で分かった。全国20の政令市のうち制定済みは7。具体的な支援の内容にも差があり、専門家は「地域差の解消を進めていく必要がある」と指摘している。

04年に成立した犯罪被害者基本法は、国だけでなく自治体に被害者らを支援する施策を策定して実施する責務があると明記している。都道府県では、宮城県が04年4月に初の支援条例を施行した。各地の条例では基本理念のほか、相談体制の整備、病院への付き添いなどの生活支援、見舞金の給付などに関する規定が盛り込まれている。

警察庁によると、条例をつくっている自治体は今年4月1日時点で21都道府県(全体の44.6%)、7政令市(同35%)、326市区町村(同18.9%)。

近年は踏み込んだ経済支援策を設ける自治体も出てきている。東京都は20年4月の条例施行に合わせ、殺人や性犯罪の被害者らが都内外へ転居する際、最大20万円の引っ越し費用を助成する制度を始めた。

19年4月に条例を施行した横浜市も同様の転居助成を行っており、20年3月末までに5件の利用があった。家事や育児が困難になった被害者らにホームヘルパーや一時保育の利用費を助成するなど、生活面でも手厚い支援を用意している。

兵庫県明石市のように、殺人事件などの加害者が賠償金を支払わない場合に上限付きで市が立て替える制度を設けている自治体もある。

ただ、自治体側の財政事情もあり、こうした施策は一部にとどまる。警察庁によると、見舞金の支給制度を導入済みの都道府県は岐阜、三重の2県、5政令市、303市区町村。貸付金制度は3県、11市区町で政令市はゼロだ。

諸沢英道・元常磐大学長(被害者学)は「事件で生活や仕事が一変する被害者は多く、住んでいる地域によって受けられる支援に差があるのは望ましくない。先進的な取り組みを多くの自治体が学び取るなどして、ニーズに合う支援策を広く整備すべきだ」と話す。

■被害者遺族「専門人材の育成を」

犯罪被害者やその家族には心身や経済面で重い負担がのしかかる。2011年に奈良県の実家で母親(当時60)を知人男性に殺害され、関東へ移り住んだ女性(38)は「町から離れないと生きていけなかった」と振り返る。

女性は海外の留学先からすぐに帰国。ホテルなどを転々としつつ捜査や裁判手続きへの協力に追われた。立ち入りが許された後に一晩だけ実家に泊まったが、恐怖に襲われて眠れなかった。近所の風景を見るたび母との思い出が想起され、心を痛めた。約2年後、裁判が一区切りついて関東への引っ越しを決めた。

転居後も履歴書に生じた「空白期間」の説明に困るなど、就職活動で苦労した。現在は仕事をしながら自治体の被害者支援条例づくりを支援する活動に携わる。「条例の整備だけでなく現場の行政職員の理解も求められる。刑事手続きや住居の問題に通じ、具体的な支援につなげられるコーディネーターの様な人材を各自治体で育ててほしい」と語る。

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