米半導体設計ソフト、制裁下も中国事業堅調の謎

ファーウェイ
スタートアップGlobe
コラム(テクノロジー)
2020/6/10 2:00
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ファーウェイは子会社ハイシリコンで最先端の半導体を開発している(北京で開いた展示会)

ファーウェイは子会社ハイシリコンで最先端の半導体を開発している(北京で開いた展示会)

シノプシスなど米国の半導体EDA(回路自動設計)ソフト大手の中国事業が堅調だ。米政府による制裁で大口顧客の華為技術(ファーウェイ)との取引は制限を受けているはずだが、決算書からは影響が読み取れない。浮かび上がるのは、中国で別の顧客層が育ち補っている可能性だ。

「我々は(制裁と)どう共存するかを学び、中国では成長が続いている」。シノプシスの経営陣は5月20日の決算説明会でこう語った。2019年5月に始まったファーウェイ制裁の影響への問いに、顧客名や数字を避けながら回答した。

同業のケイデンス・デザイン・システムズも同様で、20年1~3月期の中国向け売上高は8380万ドル(約92億円)と全社の13%を占めた。制裁を機にファーウェイとの取引を停止したはずだが、中国向けは開示を始めた18年1~3月期に比べ8割以上増えている。

EDAソフトは半導体の設計に欠かせないが、世界市場はメンター・グラフィックスを含む米国3社による寡占状態にある。技術があまりに高度で新規参入が難しく、中国でも代替メーカーが育っていない。

ファーウェイは「5G」規格対応の通信機器の頭脳に当たる半導体チップを子会社の海思半導体(ハイシリコン)に開発させる戦略をとってきた。5月15日の制裁強化を受けて台湾積体電路製造(TSMC)がチップ製造の新規受注を中止したが、そもそもハイシリコンの開発自体がEDAソフトの調達難で早晩行き詰まるとの見方もあった。

ところがEDA3社は中国売上高が増え、ハイシリコンの開発が滞ったとも聞こえてこない。なぜか。機械振興協会経済研究所の井上弘基首席研究員は「中国の地方政府がEDAソフトを大量購入していることに注目すべきだ」と語る。

中国では地方政府系の投資会社が半導体のファブレス(工場無し)メーカーの育成を進めている。いわばハイシリコンの小型版で、その数は全土で500社弱にのぼるとされる。

井上氏の調査によると、地方政府が高価なEDAソフトを購入し、これらの小さなファブレス会社に使わせる例が急増。ハイシリコン向けの販売減を補う存在になり得る。井上氏は「ハイシリコンが技術者を送れば、小さな会社でもハイシリコン並みの開発環境を再現できる」と指摘する。

シノプシス経営陣が学んだ「制裁との共存」がこんな事象を指しているのかは不明だ。ただファーウェイとしては、たとえハイシリコンが干上がっても、半導体の開発環境を維持する"抜け道"が理屈上は成り立つ。

(アジアテック担当部長 山田周平)

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