テマセク系のセムコープ、石油リグ子会社を分離へ
【シンガポール=谷繭子】シンガポールの政府系複合企業、セムコープ・インダストリーズは8日、石油掘削装置(リグ)建造子会社、セムコープ・マリン(セムマリン)を切り離すと発表した。リグ事業は長引く不況に新型コロナウイルスが追い打ちをかけ、苦境に陥っていた。今後は再生可能エネルギーなど新事業に注力する。

第1段階として、セムマリンが株主割当増資で21億シンガポールドル(約1650億円)を新規調達する。一般株主が増資に応じなかった場合はセムコープと、その最大株主のテマセク・ホールディングスが引き受ける。セムコープは最大15億シンガポールドルまで、テマセクは最大6億シンガポールドルまで出資する。
第2段階としてセムコープは、保有するすべてのセムマリン株をテマセクなど自社の株主に配当として譲渡する。セムコープは風力、太陽光発電など再生エネ事業に参入しており、投資を新事業に回して競争力をつけるねらいだ。
9月までに両社は臨時株主総会を開き、株主の同意が得られたら実施する。現在、セムマリン株はセムコープが61%を保有するが、計画が実現すればテマセクが29.9%~58%を保有する大株主となる。
セムマリンは、同じくテマセク系列のケッペル・オフショア・アンド・マリンと並び、深海油田の掘削に使うリグの世界大手だった。シェールガスの生産拡大などで油田開発投資が減り、業績が落ち込んでいた。ここへきてコロナ対策で製造現場の閉鎖を余儀なくされキャッシュフローも悪化した。市場では、セムマリンがテマセクの傘下に入ればケッペルとの統合など業界の再編が進むとの期待が再燃している。
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