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株主優待の廃止リスク ベテラン投資家はここを見る

(更新)
写真はイメージ=PIXTA

新型コロナウイルスの影響で業績が悪化している企業の一部で、株主優待を廃止したり、縮小したりする動きが出ている。企業向けに投資情報発信のコンサルタントなどを行う野村インベスター・リレーションズ(IR)によると、2020年4月の1カ月間で株主優待廃止を発表した企業は7社。それ以降も、コロナ禍で業績に深刻な影響が出ている企業の優待の廃止・縮小が相次ぐ。個人投資家には株主優待目当てで投資先を選ぶ人も多い。優待の廃止リスクを見極める方法はあるのか。

リーマン・ショック時も相次いだ優待廃止

「ここ数年は上場廃止や公平な利益還元の観点から株主優待を廃止する企業が多かったが、今年2月頃から業績の見通しを理由にした廃止を数件確認。4月以降は経営環境の変化、今後の見通しが不透明であるという理由が増え始めた」。野村IRが発行する「知って得する株主優待」の福島英貴編集長はそう指摘する。「公平な利益還元」とは、株主への利益還元を平等に行うことを指す。個人投資家に人気の高い株主優待は日本独自の制度。海外投資家や機関投資家からは株主優待を止め、配当を増やすよう求める声も多く、株主還元を配当に一本化するとの理由で優待を廃止する流れがここ数年強まっていた。

しかしコロナ禍で、その流れが変化。業績悪化や経営環境の不透明さを理由に、優待廃止や改悪に踏み切る企業が増えた。実はこうした動きは、2008年のリーマン・ショック時にも見られた。野村IRの調べでは、2008年度は88社が優待を廃止、09年度も68社と通常年の2倍程度にまで優待廃止に踏み切る企業が増えた。

東京証券取引所によると、2020年3月期決算を発表した企業のうち、今期の業績予想を非開示または未定とした企業は56.4%(5月末時点)。収益環境の不透明感が増す中、今後もコスト削減を目的に株主優待の廃止や縮小に踏み切る企業が相次ぐ可能性がある。

優待品の中身やリリースに注目

優待廃止・縮小のリスクを察知する方法はあるのか。長年にわたり優待投資を実践している個人投資家の内田衛さんは、優待品が自社製品や自社サービス・店舗利用券なのか、QUOカードやカタログギフトなど自社製品以外なのかに注目。「自社の製品・サービス以外を優待品にしているケースの方が、廃止になりやすい傾向がある」と話す。

優待のために他社製品やサービスを購入していれば、それだけコストがかかる。業績悪化時には優待制度維持のためのコスト負担が経営の重荷になるとの見立てだ。

優待銘柄など1700銘柄を保有する個人投資家の株銀さん(ハンドルネーム)は、「配送コストがかかる優待」のリスクを指摘する。カタログギフトはカタログ送付と商品送付で配送コストが二重にかかる。最近廃止になった優待の例を見ても、カタログギフトが目立つ。

企業側の発信内容も注視

優待の廃止・縮小リスクは、企業の発表資料から読むこともできると指摘するベテラン優待投資家もいる。個人投資家のなちゅさん(ハンドルネーム)は、「まれにだが、廃止の条件を予告している企業もある」と話す。

2019年1月に優待廃止を発表したファクトリーオートメーション(FA)機器の大手商社であるスズデン(7480)は、決算説明の資料の中に「『発行済み株式数×1円』を優待費用が上回れば優待を廃止する」などと記載。実際に、この条件に2期連続で抵触した後、優待廃止を発表した。

廃止の条件となる数字までは記載していなくても、発表資料などに「今後も優待制度は状況に応じて見直す」といった文言を入れている企業があり、こうした場合も廃止リスクは相対的に高いと言える、となちゅさん。このような文言は、決算発表の資料や優待内容の縮小を発表するリリース中に見られることがあるという。優待廃止リスクが気になる企業があれば、過去の決算発表の資料やリリースをチェックしてみるのも手だ。

財務状況は要チェック

多くの優待投資家が「廃止リスクを読み取る材料になる」と指摘するのが財務状況だ。コロナショックにより一時的に業績が悪化しても、財務状況が良好で資金が豊富であれば優待制度は継続しやすい。自己資本比率が10%台などと低く、財務に懸念がある企業で業績が悪化した場合は要注意だという。

財務状況に加え、株主数の増加に注目する投資家もいる。優待実施企業の中には、上場市場を変更(昇格)するために、株主数の基準を満たす目的で、優待を導入したり拡充したりするケースがある。株主数が多くなると優待にかかるコストが増え収益を圧迫。コロナで業績が急激に悪化すれば、優待を廃止・縮小するリスクもある。

一方で、優待の廃止・縮小は株価にも反映される。100株保有で3000円相当のカタログギフトを優待品にしていたシステム開発のコラボス(3908)は、今年1月に優待廃止を発表。その後、業績を下方修正したこともあり株価は大きく下落した。200株保有で割引券と年1万2000円相当の優待券を提供していた梅の花(7604)は、3月に優待券を廃止し割引券のみに縮小することを発表。翌営業日の株価は2割下げた。こうした株価下落リスクを避けるため、無配にしてでも優待は継続と判断する企業もある。

コロナ禍で業績悪化の危機に直面している企業の中でも、優待実施の目的や財務状況などの個々の事情によって、優待を維持するか、廃止・縮小に踏み切るかの判断は異なる。優待投資家として人気の桐谷広人さんは、「優待は企業が『気持ち』で行うもの。廃止か継続かを投資家が見極めることは難しい。だからこそ、銘柄を分散して投資することが肝要」と話す。

(佐藤由紀子)

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