コロナ家計、見える変化と映さぬ苦境
知っ得・お金のトリセツ(13)

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2020/6/9 2:00
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巣ごもりでは家庭用ゲームの販売が大きく伸びた

巣ごもりでは家庭用ゲームの販売が大きく伸びた

起床後に最小限の身支度で在宅勤務開始。昼はリモート学習の子どもとパスタや即席麺のランチを取り、夜も自炊で缶チューハイをプシュ――。5日に総務省が発表した4月の家計調査では緊急事態宣言下で日本家計の「ステイホームぶり」が鮮明になった。

グラフを見れば一目瞭然。旅行や娯楽施設の利用費がほぼ消滅し、移動交通費も大幅減。外出用の身支度出費もガクンと減った。一方、増えたのが巣ごもり系。自炊用の食材やパソコン、ゲーム関連、ネット接続料へとお金が向かった。

■全570項目で9000家計を再現

約70年続く由緒ある家計調査は全国9000世帯を抽出し、毎月、実際に付けてもらった家計簿を基に集計する。例えば魚ならサバとシメサバ、エビと桜エビを厳密に区別する細かさが求められる570項目もの財とサービスのお金の記録だ。それだけにお隣の家計簿をのぞくかのようなビビッドさが特徴。2カ月前、4月分の答え合わせが終わった今、関心はその先、新しい生活様式を取り込んだ「withコロナ家計」に移る。

■巣ごもり後に始まる断捨離&自給自足

巣ごもり後に家計が取る一手は何か? 家計簿アプリ「おカネレコ」が5月下旬にユーザーに行った調査によるとまずは断捨離。掃除用品への出費増が目立ち、巣ごもりを機に断捨離に踏み切ったとする回答が多かった。

「巣」に対する関心はDIYや自給自足へも向かう。家計調査では住居費の中の「設備材料」なる不思議な費目で顕著な出費増が観測される。3月に前年同期比1割増となり4月にはなんと7割増。一体、この項目には何が含まれるのか?

答えはレンガやブロック、芝生など庭いじりやDIY用の素材らしい。ホームセンターの売り上げデータでも自家菜園用の種苗などの伸びが目立つ。在宅勤務の長期化などwithコロナ時代を見据え着々と家を拠点化、巣固めする家計像が浮かび上がる。

■住居費わずか1万6642円?

と、思いつつ「お隣の家計簿」をのぞいていると「あれ?」、違和感を覚える項目がある。それこそ巣、住居そのものに掛かる費用の少なさだ。4月の「住居費」計上額はわずか1万6642円。多くの人の家賃や住宅ローン返済額の実感からかけ離れている。

理由はどうやら2つ。(1)住居費にカウントされるのは、借りている住居に対する家賃・地代だけ。持ち家に対する住宅ローンの返済額は毎月の消費支出としてはカウントされない (2)しかも回答者の9割近くが持ち家所有者――という事情があるようだ。

住宅ローンの返済は住居費ではなく、資産・借金の増減を示す「土地家屋借金返済」に反映される。企業の会計でいうと損益計算書(PL)を通さず直接、資本の部が増減するイメージか?

その額、およそ9万円弱。これなら実感にも沿う。巣ごもりをすれば消費支出は減り、4月に前年同月比11%減と過去最大の落ち込みを記録したが、ローン返済は関係ない。消費支出とは逆向きに増加しており、固定費の重みがズシリ増した格好だ。

ちなみに掛け捨て以外の保険の掛け金についても同様の計上ルールだ。ニュースのヘッドラインで報じられる消費の増減が映さない家計の固定費への目配りが欠かせない。

■「隣の家計」は意外に余裕があった…

(2)の母集団の持ち家比率にも注意が必要だ。日本の平均6割程度に比べ、かなり高い。持ち家の人の住居費は「ゼロ」としてカウントされるから住居費の平均を押し下げる結果につながる。

持ち家比率だけではない。実は家計調査の母集団と足元の「日本の縮図」とのブレについては、かねて指摘されてきた。

何と言っても家計簿の提出には手間暇がかかる。例えば生鮮食料品は値段だけでなく、重さまでも支給される「はかり」で計測し手書き記入するのが基本ルールだ。結果的に協力してくれる世帯は、共働きより専業主婦世帯が多くなる。公務員の比率も全国平均に比べて高めになっている。

家計調査が示す消費の変化は確かに興味深いが、コロナ禍に苦しむ家計のすべては映さない。巣ごもり消費活況の陰にはステイホームすると途端に収入が途絶える人の苦境がある。政府は収入減で住まいを失う可能性のある人を対象に家賃を補助する「住居確保給付金」の支給要件を一部緩和しているが、東京23区の単身世帯で5万円台などと十分ではない。巣ごもりするにはおカネがかかる。巣が安泰でない家計への迅速な支援を今こそ急ぐべきだ。

山本由里(やまもと・ゆり)


1993年日本経済新聞社入社。証券部、テレビ東京、日経ヴェリタスなど「お金周り」の担当が長い。2020年1月からマネー編集センターのマネー・エディター。「1円単位の節約から1兆円単位のマーケットまで」をキャッチフレーズに幅広くカバーする。

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