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聖火待ちわびるランナー コロナ禍の社会に勇気を

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2020/6/11 2:00
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2021年夏に延期された東京五輪に向け、聖火ランナーたちが仕切り直しの号砲を静かに待っている。新型コロナウイルスの流行で大会とともに聖火リレーは先送りされ、詳細な実施方法はまだ決まっていない。走る予定だったのは約1万人。「来年こそ」と、コロナ禍で落ち込んだ社会を勇気づける走りを望む。

「打ち出し板金」で0系新幹線を製作した山下工業所の藤井洋征さん(山口県下松市)

「打ち出し板金」で0系新幹線を製作した山下工業所の藤井洋征さん(山口県下松市)

山口県内のランナーに決まっていた山下工業所(同県下松市)の板金職人、藤井洋征さん(75)は延期決定後も週3回ほど、市内の公園などで運動している。「来年はぜひ走りたい」と準備を続けるつもりだ。

前回の東京五輪直前、1964年10月1日に開業した東海道新幹線。その初代0系の「団子っ鼻」と呼ばれた先頭車両の板金加工を担った。敗戦からの復活を印象づける「夢の超特急」の開通に間に合わせるべく、「徹夜でハンマーを打ち続けました」。打ち過ぎで指がかたまり、柄から離れなくなったこともある。

その後、半世紀にわたって代々の新幹線の「顔」を作り続けた。その数、400両以上。ハンマーで鉄板をたたき、曲面を生み出す「打ち出し板金」と呼ばれる高度な技術が評価され「現代の名工」に選ばれた。

機械化が進む製造現場だが、今も手作業の打ち出し板金は現役だ。誇りをもって「人間にしかできない仕事がこれからもずっとある」と確信する。走る機会は持ち越されたが、「会社の先輩をはじめ、周りの人のおかげでここまでこられた。感謝の気持ちで走りたい」と意気込む。

新型コロナの感染拡大とともに聖火リレーの実施方針は大きく揺れた。ギリシャでの採火式は無観客となり、同国でのリレーは途中で中止に。聖火は3月20日に日本へ到着したものの、無観客でのリレーや、ランタンを車で運ぶ形式が検討された揚げ句、五輪延期決定で取りやめになった。

延期後の聖火リレーについて、大会組織委員会は内定済みのランナーが優先的に走れるよう配慮する方針だ。ただ、延期によるコスト増を背景に、日程短縮や各地の式典などの縮小を検討している。予定していた約1万人全員が参加できるかは不透明だ。

平和大使の活動を説明する山口雪乃さん(長崎市)

平和大使の活動を説明する山口雪乃さん(長崎市)

「走るチャンスがあると信じ、精いっぱい平和を訴える活動をしていきたい」。5月に長崎県内を走る予定だった山口雪乃さん(17)は前を向く。被爆3世で、核兵器廃絶を求める署名を国連機関に毎年提出する「高校生平和大使」を務めている。

新型コロナの影響で署名活動は自粛中だが、他のメンバーと一緒にインターネット上で活動を紹介し、平和に関する記事も発信するプロジェクトを始めた。

21年の聖火リレーに思いをはせる。「世界が協力すればウイルスにも打ち勝てる。リレーを通じ、核廃絶も世界が一つになれば成し遂げられると伝えたい」

自国の文化を小学生に伝えるオランダ人のニフュユス・ヨセウスさん(千葉県流山市)

自国の文化を小学生に伝えるオランダ人のニフュユス・ヨセウスさん(千葉県流山市)

東京五輪は「多様性と調和」を大会コンセプトに掲げる。聖火ランナーに決まっていた外国人は多く、千葉県流山市で語学教室を営むオランダ人、ニフュユス・ヨセウスさん(60)もその一人だ。

日本では通算10年以上暮らし、古武道で心身を鍛えるなどして異国の文化を学んだ。市内の小学校を巡回し、オランダの暮らしなどを紹介して両国の懸け橋になろうと尽力してきた。

同県などに緊急事態宣言が出された4月上旬以降、自身の教室はレッスンのキャンセルが相次いだ。「苦しい時だからこそ、お互いに助け合うことが大切」と改めて思う。「世界各国がこの事態を乗り越え、来年のオリンピック開催を無事に迎えられたら」と聖火リレーに希望を込めた。

(朝比奈宏、伊藤仁士、島田直哉)

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