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苦境続く日雇い労働者 コロナ禍、都の事業2カ月中断

新型コロナウイルスの影響で、日雇い労働者が緊急事態宣言の全面解除後も苦境に陥っている。多くの労働者が暮らす東京都の山谷地区では仕事紹介の事業が4月上旬から中断。徐々に再開されるが、働き口が行き渡らない状況は続く。困窮から路上生活を余儀なくされている人もおり、支援者らが配る弁当や炊き出しが頼みの綱だ。

「牛丼か親子丼、どっちがいいですか」。東京都の台東、荒川両区にまたがる山谷地区。5月下旬の夜、路上にテントが点在する一角で支援者らが作りたての弁当を配って回ると、テントから次々と手が伸びた。「お体に気をつけてくださいね」「ありがとう、助かるよ」。この夜は15個の弁当が配られた。

近年、同地区では特殊車両を運転できるといった技能を持っていない高齢者への仕事の紹介はほとんどなくなった。3年前から路上生活を続ける男性(64)は建築現場での日雇い労働を続けてきたが、仕事が激減。最近の主な収入源は月に数回、都立公園や道路の清掃や除草をして得る約8千円の日当だった。

しかし、その仕事も今はない。「以前なら雨の日はドヤ(簡易宿泊所)に泊まれるお金はあったが、こんな経験は初めて。早く仕事をしたいよ」。所持金は千円に満たず、食事は支援者の炊き出し頼み。1日1食の日も多い。

中断しているのは、山谷で暮らす日雇い労働者のための都の「特別就労対策事業」。登録者計約1700人に対して1日255人分の仕事を紹介、輪番制で1人当たり月に2、3回の仕事で2万円前後を受け取ることができた。ただ、新型コロナの感染拡大を受けた緊急事態宣言に伴い、現場に向かう際のバス内での「3密」などを避けるために停止している。

都は大型連休中、路上生活の日雇い労働者を対象に、無料で宿と食事を提供した。約50人が利用したが、連休後は多くの人が再び路上に戻った。

わずかな年金と日雇いで得た収入で暮らしてきた男性(67)もその一人。たまに利用していたネットカフェは休業中で、夜になると路上にテントを張る。3月には軽い脳梗塞を患った。体力も衰え「今みたいな生活では、もう体がもたない」と声を落とす。

特別就労対策事業は6月8日から再開されるが、都は「バス内などでの3密対策が欠かせず、当面は規模を半分ぐらいに縮小して実施せざるをえない」(就業推進課)とする。紹介される仕事量が元に戻るまでは時間がかかる。

都は日雇い労働者に対し「生活保護を申請するなど、行政の支援窓口に相談に行ってほしい」と呼びかける。ただ、長く音信が途絶えた家族に所在を知られたくないなどの理由で申請をためらう人や「まだ十分に働けるから、生活保護を受けなくても大丈夫」と話す人も少なくない。

一方、こうした労働者を救済しようと、食事の炊き出しやマスク、テントなど必需品の配布を通じた民間の支援も活発になっている。

地元に店舗を構える「さんやカフェ」(台東区)は大型連休後、週3回のペースで近隣の路上生活者向けに作りたての温かい弁当を配る活動を続ける。メンバーらは「このまま困窮が進めば、自立のチャンスまで奪われかねない」と危機感を募らせている。

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