個人データ、安全な活用促す 改正保護法が成立

2020/6/5 23:30
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データ利用の急拡大に合わせた改正個人情報保護法が5日成立した。個人が望まないデータの利用停止を企業に求める権利を拡大する一方、個人を特定しない形で分析に使いやすくする制度も盛り込んだ。個人データを活用する重要性は新型コロナウイルスへの対応でも浮き彫りになった。プライバシーを守る安全な活用をどう拡大させるかが引き続き焦点になる。

改正法は2022年春ごろまでの全体の施行をめざす。企業によるデータの利活用を後押しする制度を設ける。他の情報と照合しないと個人を識別できないよう、氏名を削除するなどしてデータを加工した「仮名加工情報」の制度を導入する。社内での分析などに使う場合に限って本人からの開示や利用停止請求の対象外とする。

小売業の企業が各店舗から顧客の年齢や性別、購入時間帯などの購買履歴を集め、社内で分析して商品開発に生かすなどの使い方が想定される。

17年の法改正時には「匿名加工情報」と呼ぶ制度を導入したが、個人データを復元できない状態まで加工しなければならなかった。情報がそぎ落とされてデータ分析には物足りないと活用が進まなかった。

データ利用を拡大する環境づくりとして、プライバシー保護など個人の権利も強化する。必要のなくなったデータの利用停止を企業に求められる「利用停止権」の拡充を盛り込んだ。個人の権利を侵害する恐れがある場合などに利用停止を請求できる。データの流通量が増え、本人が把握できないところで分析などに多用されるのを防ぐ。

単体では個人情報ではないが、入手した企業側で個人と照合して使う場合は本人の同意を取ることを義務付ける。ウェブの閲覧履歴を記録した「クッキー」情報などがこれにあたる。

クッキーを巡っては、19年8月、就職情報サイト「リクナビ」がクッキー情報をもとに就活生の内定辞退率を分析し、企業に販売していた問題が発覚。こうしたケースでは個人情報と同等に扱う必要があると判断した。

■コロナで必要性一段と

個人に関するデータをいかに安全に活用するかは新型コロナ対策でも注目された。コロナ対応のなかでは感染症予防や給付金の受け取りなどのように、政府や企業にデータの管理を委ねた方が個人のメリットが大きくなるケースがあるということも分かってきた。

例えば、ヤフーやNTTドコモなどは自社サービス利用者の位置や検索履歴などのデータを社内で分析し、統計情報に加工したうえで厚生労働省に提供。それを政府が分析することで「夜の街」など感染リスクが高い場所を絞り込んで国民に知らせることに役立った。

新型コロナへの対応では、個人情報の扱いに関するルールの違いから患者のデータが共有されず治療に支障が出るケースも出た。政府は自治体や民間、行政機関でそれぞれ異なるルールを統一する考えで、個人情報保護法の再改正をめざす。

世界経済フォーラム(WEF)は今年1月、感染症対策や災害対応などのように公益性が高いケースに、政府や企業などが個人データを活用できるようにするためのルールのあり方について提案を示した。

ただ、近年は政府や企業からプライバシーを守るため、個人のデータを個人が管理できるようにする方向でルール見直しが進んできた経緯がある。欧州連合(EU)の一般データ保護規則(GDPR)が典型だ。

日本も個人情報保護で世界最高水準のEUから「十分に保護されている」とお墨付きを受ける水準に達している。今回の法改正でさらにEUに近づいたが、自身のデータの扱いを巡る権利ではなお及ばない。

新型コロナの感染拡大を防ぐため、スマートフォンで感染者との接触を検知するアプリの導入では「個人監視の強化につながる」と批判が出ている国もある。個人データの活用を巡る国際的な議論の行方が注目される。

(五艘志織、デジタル政策エディター 八十島綾平)

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