うごめくファンド、初夏のラリーの後に(編集長コラム)

2020/6/5 20:21

6月に入ったばかりなのに、5日の東京都心は気温29度という暑さでした。

一足先にサマー・ラリーが到来しているかのような気配は東京株式市場にもにじんでいます。日経平均株価は午後から上昇に転じ、4カ月ぶりの2万3000円台まであと一歩の水準に迫りました。世界の新型コロナウイルス感染者数は累計で650万人を超え、米国では白人警官による黒人暴行死に抗議する活動が全米規模で広がり、軍が出動する事態になっているのに、米ダウ工業株30種平均は4日までに3月の安値から4割高の水準まで戻りました。実体経済の悪化よりも経済再開への期待が先行する状況になっています。

3~4月に苦境に追い込まれた企業の株価も急回復しています。

旅行予約サイトの(左から)楽天トラベル、ブッキング・ドット・コム、エクスペディア

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例えば、オンライン旅行予約大手のエクスペディアグループは、ウイルスの世界的流行による都市封鎖の影響で年初に100ドルを超えていた株価が3月中旬に40ドルまで急落。時価総額にして100億ドル近くが吹き飛ぶ場面がありました。9割の国際航空便が減便となるなかで、事業存続を危ぶむ声さえありました。

欧米の主要都市が行動制限の緩和と経済再開に動き出し、主要な観光地もそろりと再開に向かい始めました。6月初旬時点で、エクスペディアの株価は90ドル近辺まで回復しています。5月下旬に発表した2020年1~3月期決算の最終損益は13億ドルの赤字でしたが、どこ吹く風です。

この急速な戻りによって、大きな含み益を手にしている勢力がいます。4月の苦境時にエクスペディアの増資32億ドルを引き受けたプライベート・エクイティ(PE)大手のシルバー・レイク、アポロ・グローバル・マネジメントなどです。4月中旬はちょうど米連邦制度準備理事会(FRB)が低格付け債の買い入れを含む巨額の信用供与を表明していた時期でした。このころ、シルバー・レイクは同時に米民泊サービス大手エアビー・アンド・ビーの増資も引き受けています(エアビー・アンド・ビーは非上場企業)。含み益は、リスクをとって株式を引き受けたからこその果実といえます。主要中央銀行の巨額の資金供給によって金融システムを支えた結果、PEファンドがリスクマネーの担い手になれたという側面もあるでしょう。

日本でも、株価が急落した時期にひそかに買いに入っていたファンドの足跡が明らかになっています。

5日午後、東芝の前期決算の内容が伝わると、株価は上昇した

5日午後、東芝の前期決算の内容が伝わると、株価は上昇した

5日、2020年3月期連結決算を発表した東芝の株式の追加取得していたのは、エフィッシモ・キャピタル・マネージメントです。5月中旬時点で発行済み株式の15%を取得していることが公表されています。大量保有報告書には「経営陣への助言、重要提案行為等を行う」とあり、6月7日に全面適用となる改正外為法関連の思惑も加わって、今後の定時株主総会シーズンで、アクティビスト・ファンドの動向が注目を集めそうです。

7日号の巻頭特集は、家を買った方もこれから買う方もぜひ読んでいただきたい不動産特集です。

コロナ危機で不動産市況がどう変わっていくのか。マンション、オフィス、ホテル、REIT市場の変調の兆しを追いました。

第2特集フォーカスは「データが語る『新常態』」、世界の主要都市で戻り始めた人手を「移動」、「交通」、「株価」、「消費」といったデータで分析しました。週末の投資戦略の点検にぜひお役立てください。

(日経ヴェリタス編集長 塚本奈津美)

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