トランプ氏批判、米軍元高官から続出 軍動員に懸念

2020/6/5 10:30 (2020/6/5 17:39更新)
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マティス前国防長官(左)はトランプ大統領のシリア撤退決定に抗議して政権を去った=ロイター

マティス前国防長官(左)はトランプ大統領のシリア撤退決定に抗議して政権を去った=ロイター

【ワシントン=中村亮】黒人暴行死事件の抗議デモに対してトランプ米大統領が連邦軍動員を検討していることに、元軍高官から批判が相次いでいる。退役後も政治的発言を控えることが多い軍OBが、最高司令官である現職大統領を非難するのは異例だ。国防総省は4日に首都近郊の連邦軍の一部撤収を決めたが、トランプ氏が「強い指導者」の演出に軍を私物化するとの懸念は消えていない。

「彼は立派な人物だ」。トランプ政権で大統領首席補佐官を務めたケリー元海兵隊大将は4日、米紙ワシントン・ポストのインタビューでマティス前国防長官への支持を表明した。マティス氏は前日、トランプ氏のデモ対応を「軍と市民社会に誤った紛争を生む」と痛烈に批判。反発するトランプ氏が「過大評価された大将」とマティス氏をこき下ろしていた。

米軍制服組トップを務めたマイク・マレン元統合参謀本部議長も米誌への寄稿で「軍最高司令官(であるトランプ氏)による命令の健全性に信頼が置けなくなっている」と批判。ジェームズ・スタブリディス元北大西洋条約機構(NATO)欧州連合軍最高司令官も政権がホワイトハウス前のデモ隊を排除したことに触れて「天安門のようにしてはならない」と苦言を呈した。

トランプ政権はデモがさらに暴徒化した場合に備えて首都ワシントンの近郊に米兵1600人を集めたが、エスパー国防長官は4日、一部の撤収を決めた。武力を見せつけてデモ隊を威圧してきたトランプ氏も容認したとされる。ただ完全撤収については「状況次第だ」(国防総省高官)としており、動員の可能性は完全には消えていない。

共和党系の政治コンサルタントのダグラス・ヘイ氏は「トランプ氏は(軍を通じて)法と秩序を重視する姿勢を示し、混乱を容認するかのような民主党と対比しようとしている」と指摘する。11月の大統領選に向けて米軍が政治利用されているとの見方は多い。

軍にとって人種問題は敏感な問題だ。ピュー・リサーチ・センターによると、2017年時点の人種構成は、非白人が43%と04年に比べて7ポイント上昇した。非白人の貧困家庭出身者が経済的理由で入隊するケースもある。エスパー氏が3日まで公然と黒人差別問題を批判しなかったことにも疑問の声があがっている。

国防長官時代のマティス氏のスピーチライターを務めたガイ・スノッドグラス氏は、国内の混乱が長引けば、中国やロシア、北朝鮮につけいる隙を与えかねないとの懸念が軍OBにはあると指摘する。中国は香港への統制を強める「香港国家安全法」の施行を急ぎ、台湾統一への意欲も隠さない。ロシアは新たな核兵器使用の指針で、通常兵器に対しても核兵器で対抗する可能性を示した。

多くの世論調査では抗議デモや新型コロナウイルスへの対応が不適切だとして、トランプ氏は11月の大統領選で民主党の候補指名を固めたバイデン前副大統領に支持率で引き離されている。米メディアによるとトランプ氏は4日、選対幹部と世論動向に関して協議。今後の対応を話し合ったとみられている。

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