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組織の閉塞、斬新な映像で(演劇評)

エイチエムピー・シアターカンパニー公演

遠隔で演技する俳優を合成した「仮想劇場」で上演した

公演中止が相次ぎ、インターネット上の作品配信が続く中、斬新な発想のライブ映像による演劇公演が行われた。エイチエムピー・シアターカンパニーの「ブカブカジョーシブカジョーシ」(5月22日所見、大竹野正典作、笠井友仁演出)。

俳優の顔のアップだけでなく、身体表現と舞台空間の構築を重視。俳優達は、開演と同時にそれぞれ自宅で、カメラの前で全身を使って演技。それらの画像を一つにまとめ上げた。あたかも同じ空間で演技しているような自然な仕上がり。白黒画像処理し、白を透明に加工することで、画面前面に映る俳優の、背後にいる俳優の演技も透かし見える。冒頭、大阪市のウイングフィールド場内の映像を流し、画面上の「仮想劇場」に俳優と観客が集う臨場感も演出。

1973年に起きた企業内の殺人事件「上司バット撲殺事件」に着想を得て、会社組織に生きる人々の、不条理な世界を描いた作品。神経症を患い休職中だったアメミヤ(ナカメキョウコ)が復帰。彼には新しい上司のモモチ課長(高安美帆)の何気ない言葉が、すべて自分を責めているように聞こえ、執拗に突っかかる。一方モモチは、社長達から理不尽な命令を受ける。上司と部下双方からの抑圧に追い詰められたモモチは、幻覚を見るようになる。さらにアメミヤは狂気に陥り、モモチの殺害に至る。

パワハラの悲劇を乾いたタッチで戯画化。誇張した身体表現で、コミュニケーション不全の中、心が壊れていく様を活写。小さな画面に映し出される人間模様。その閉塞性が、組織内の閉塞感を描く作品テーマと合致。俳優とスタッフの、熱意溢(あふ)れる労作の舞台。

(大阪芸大短期大学部教授 九鬼 葉子)

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