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梅棹忠夫と梅原猛、「巨人」の思考に迫る新刊

文化の風

「梅原猛先生追悼集 天翔ける心」(右)と「梅棹忠夫の『日本人の宗教』」

関西が誇る知の巨人、梅棹忠夫と梅原猛。かたや国立民族学博物館(みんぱく、大阪府吹田市)の初代館長、かたや国際日本文化研究センター(日文研、京都市)の初代所長を務め、いずれも文化勲章を受章した。旺盛な著述活動で大きな足跡を残した巨頭2人を巡り、相次ぎ新刊が出た。

幻の著書「解凍」

「梅棹忠夫の『日本人の宗教』」(淡交社、5月6日初版)は、梅棹生誕100年を記念し、みんぱくで開く企画展「知的生産のフロンティア」(9月3日~10月20日)にあわせて刊行された。

国立民族学博物館初代館長の梅棹忠夫

梅棹は宗教という捉え方の難しい対象を、持ち前の斬新な着眼点で平たく読み解く。世界的な宗教を「精神における流行病ととらえ」てみたり。神道、仏教、キリスト教を使い分ける日本人の信仰生活を、ユーザー側からみた産業論に当てはめてみたり。あえて教義論、思想史への深入りを避けることで、宗教現象の見取り図が明快になる。

目玉は幻の著書に迫る第1章(全3章構成)だ。「梅棹さんが5部構成かつ目次立てまでほぼ固めながら、未刊に終わった構想を"凍結状態から解凍"した」。そう解説するのは、この本の編著を手掛けた中牧弘允・千里文化財団理事長(みんぱく名誉教授)。

当初の構想は淡交社が企画したそうそうたる執筆陣による「世界の宗教」全12巻の最終巻。ところが梅棹は1970年の大阪万博に続きみんぱくの創設準備に追われ、執筆を中断。

梅棹忠夫氏の「こざね」

"凍結"状態だった手書き資料が、みんぱくの梅棹資料室で段ボール箱から2016年に発見された。見つかったのは名刺より一回り大きい短冊「こざね」約350枚だ。

こざねは梅棹の著述活動に欠かせない情報整理の手法で、走り書きした無数のメモ断片を右に左に置き換えながら論点の道筋をつくっていく。

見つかったこざねは模造紙3枚に張り合わせてあったほか、一部は束ねたまま、残りはバラバラだった。このこざねを基に解説したのが本書の第1章だ。梅棹の思考過程をのぞき込むような興趣がある。このほか宗教に関する論考や講演、1986年に行われた梅棹と中牧理事長との対談が収められている。

38研究者が文集

一方、「梅原猛先生追悼集―天翔(か)ける心」(日文研、3月20日発行)は、ゆかりのある研究者38人が、梅原の在りし日を振り返る文集。新聞や雑誌に寄稿した再録も含み、あいにく非売品だが、京都市内の図書館などで読めるという。

国際日本文化研究センター初代所長の梅原猛

もじゃもじゃの髪ゆえに「『聡明(そうめい)な稚児姿の酒呑童子』を思わせ」(小松和彦)た梅原。「知の巨人、学界の風雲児、異端児、奇人・変人・天才、(中略)京都の宝、京都の妖怪、等々、さまざまに評され」(同)つつも、それさえ楽しむ懐の大きさがあった。

「ロマン精神へのやみがたい衝動とあこがれ」(山折哲雄)から、いざ集中すると「左右別の靴を履いて出かけた、デパート屋上にお子さん二人を置き忘れて帰った」(辻惟雄)といった日常での不器用さに彩られ「稀(まれ)に見るピュアー」で「邪気がない」(井波律子)研究者像が浮かぶ。

そんな梅原の真骨頂は「古今東西の思想を(中略)『編集』する能力にたけていたことだ」(山折)。その能力を「人間を編集する仕事に転用し(中略)様々な分野の研究者を発掘し編集して新しい組織をつく」(山折)っていく。こうして「それぞれに専門分野をもちながら必ずその専門分野をはみだすような研究者が内外から三〇名ほど選ばれ」(芳賀徹)日文研が誕生した。

梅原学については山折はじめ井上章一や中沢新一、中西進が論じている。

(編集委員 岡松卓也)

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