東南アジア、コロナ下でも輸出堅調 医薬・食品けん引

2020/6/4 17:00
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世界的な医薬品の需要増加が、シンガポールの輸出を押し上げた(シンガポール港)

世界的な医薬品の需要増加が、シンガポールの輸出を押し上げた(シンガポール港)

【シンガポール=中野貴司】新型コロナウイルスの感染拡大で世界経済が減速する中で、東南アジアの貿易拠点であるシンガポールやタイの輸出が堅調を維持している。医薬品や食料など生活必需品への需要が世界的に高まったためだ。ただ、これまで主力だった電機や自動車などの輸出は低迷しており、今後も増勢を維持できるかは不透明だ。

シンガポールの4月の輸出額(石油を除く)は前年同月比で9.7%増と、3カ月連続のプラスとなった。けん引したのは医薬品で前年同月比で2.7倍に増加。とりわけ日本向けは9.6倍、欧州連合(EU)向けは5.7倍と先進国・地域への輸出は記録的な伸びとなった。食品関連の輸出も米国向けが3.2倍となり、全体でも66%増えた。

医薬品や食品の増加が目立ったのはタイも同様だ。4月は主力の輸出品であるコメと果物の輸出がそれぞれ23%、3%増えたほか、魚や小麦、飼料などの輸出が軒並み前年同月比でプラスとなった。医療器具と医薬品の輸出も9~13%伸び、全体の輸出額(2.1%増)を押し上げた。

4月は東南アジアの主要国で外出規制が敷かれ、経済活動が停滞した時期だった。シンガポールでは重要産業以外の職場が閉鎖され、タイでは自動車各社が相次いで工場の操業を休止した。多くのエコノミストが輸出の減速を予想した中で、輸出が堅調だったのは、各国が医薬品・医療器具の確保や食料の備蓄を急ぎ、これらの需要を取り込めたことが大きい。

世界の製薬大手の開発・製造拠点になっているシンガポール、多様な農水産品を輸出するタイは特に恩恵を受けた。安全資産とされる金の需要が世界的に高まったことも金の取引が活発な両国の輸出増の一因となった。

ただ、医薬品以外の製造業の輸出は低迷が続いている。タイの主力製品の自動車・部品は4月に前年同月比で54%減った。マレーシアは輸出額の4割を占める電気製品の生産が停滞し、4月の全体の輸出も24%減に沈んだ。

東南アジア各国は5月以降、経済活動を段階的に再開しており、工場の稼働率が高まれば輸出にもプラスに働く。一方、医薬品や食料の需給は一時より改善しており、先進国は自国の生産体制を強化している。世界経済の回復が遅れれば、製造業関連の輸出の低迷が長引き、輸出全体も失速する懸念が残る。

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