欧州、雇用情勢に南北間格差 観光低迷が打撃に

2020/6/3 20:33
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新型コロナの流行を受けて閉鎖される職業安定所(4月、マドリード)=ロイター

新型コロナの流行を受けて閉鎖される職業安定所(4月、マドリード)=ロイター

【ブリュッセル=竹内康雄】欧州連合(EU)統計局が3日発表した4月のユーロ圏の失業率(速報値)は7.3%と前月から0.2ポイント上昇し、高止まりした。新型コロナウイルスの影響は、観光などサービス業への雇用依存度が高い南欧が大きく、統計に表れない失業者も増えており、南北間の格差が広がる傾向にある。各国は雇用対策を急ぐが、社会不安につながりかねない。

「外出制限をすぐやめろ」「政権は辞職せよ」。スペインのマドリードやバルセロナでは、サンチェス政権を批判するデモが散発している。同政権は21日まで非常事態宣言を延長する方針で、実現すれば3カ月超になる。国民は自らの生活基盤を揺るがす規制に不満を募らす。

スペイン労働省が2日発表した5月の失業者数は前月から約2万7千人増えた。5月は経済活動の一部が再開され、3、4月がそれぞれ30万人、28万人増えたのに比べると落ち着きつつはある。だが地元メディアによると、5月としては2008年以来の悪い水準だ。

ユーロ圏の失業率は3月の7.1%を直近の底に上昇に転じた。欧州委は20年通年で9.6%になると予測しており、各国とも一段と悪化する見通しだ。4月の国別をみると、スペインやフランス、キプロスやマルタなど南欧は悪化。一方、ドイツやオーストリアは3月と同水準だった。休業や勤務時間の短縮で減る就業者の賃金を補助するといった政府支援策が奏功したようだ。

雇用環境は公表値よりも悪いとみるのが一般的だ。例えばイタリアは3月の8.0%から6.3%に改善しているが、求職活動ができなかったり、就職を当面諦めたりした場合は失業者に算入されない。

伊国家統計局によると、労働人口に占める就職活動をしていない人の比率は4月に38.1%と11年以来の高水準に達した。イタリアだけでなく、新型コロナの影響で「学校閉鎖による子供の世話や求人激減で労働市場から一時的に離れる人は多い」(欧州系証券)。統計に反映されない事実上の失業者は多いとみられる。

南欧の失業率が北部欧州より高い要因は主に2つある。1つは外出制限や店舗閉鎖といった厳しい規制が長期間続いたことだ。ドイツは3月半ばに外出制限などの厳しい規制を導入し、4月下旬には緩和に動いた。一方、イタリアやスペインの厳格な規制は2カ月前後。外出制限や店舗休業が長引けば長引くほど景気は落ち込み、休業による収入減や企業の資金繰り悪化につながる。

2つ目は経済構造の違いだ。南欧では観光や小売り、飲食などが雇用の大きな受け皿になっている。世界旅行ツーリズム協議会によると、観光関連産業が全雇用に占める割合はギリシャが21.7%。イタリアとスペインもそれぞれ15%弱なのに対し、ドイツが13%、オランダは10%。新型コロナの影響は製造業よりサービス業が大きいため、失業率は上がりやすい。

とりわけ若者の失業率が上がりやすい。ユーロ圏の24歳以下の失業率は15.8%と3月から0.7ポイント上昇した。イタリアやスペインでは若者の職場の3~4割が外食などのサービス関連という。同産業は有期雇用が多く「スキルの乏しい若者から契約を解除される」(欧州政策研究所のグロス調査部長)。マッキンゼー・アンド・カンパニーは4月下旬の報告書で、欧州の若者の41%に失業のリスクがあると警告した。

南欧では公式統計に反映されない「地下経済」で働く若者も多いとされる。イタリアでは350万人以上が社会保障制度に加入しなかったり、納税をしない地下経済で働いているとされ、安全網の枠外に置かれている。

失業した若者は反EUや反移民などの思想に走り、社会不安につながるリスクがある。シンクタンク「ブリューゲル」のジョルト・シニアフェローは「若者の失業はスキルが損なわれるのに加え、出生率と教育費にも影響する。長期的にも経済にマイナスになる」と懸念する。

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