米、デジタル税で孤立深める 欧州・新興国へ報復検討

2020/6/3 21:00
保存
共有
印刷
その他

早期の国際合意を避けたい米国と、しびれを切らせて独自課税を探る欧州や新興国との摩擦は激しさを増している=ロイター

早期の国際合意を避けたい米国と、しびれを切らせて独自課税を探る欧州や新興国との摩擦は激しさを増している=ロイター

【ワシントン=河浪武史】トランプ米政権は欧州や新興国など10カ国・地域がそれぞれ独自に導入・検討を進める「デジタルサービス税」に対し、不当に米企業を狙い撃ちしているとして、報復関税の検討に入った。背景にはデジタル巨大企業の税逃れを防ぐための国際ルールづくりを巡る対立がある。早期の国際合意を避けたい米国と、しびれを切らせて独自課税を探る欧州や新興国との摩擦は激しさを増しており、米当局は孤立を深めている。

■止まらぬ独自課税

米通商代表部(USTR)のライトハイザー代表は2日、「米企業と労働者を守るため、あらゆる適切な行動を取る用意がある」との声明を出した。関税発動を視野に、デジタル課税の調査に入る。対象は欧州連合(EU)と英国、イタリア、スペイン、オーストリア、チェコ、ブラジル、インド、インドネシア、トルコの10カ国・地域だ。

英国は世界全体で5億ポンド(約680億円)の売上高がある企業などを対象に、4月からデジタルサービス課税を導入した。財政難のインドも4月からネット通販などの売上高に2%の課税を導入。EUも新型コロナウイルス問題の復興財源として検討に入った。各国が雪崩を打って独自課税に乗り出しつつある。

米政権は「米国勢を狙い撃ちしたものだ」(ムニューシン財務長官)と反発する。19年7月にデジタルサービス税を先行施行したフランスは、課税対象27社のうち17社がGAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン・ドット・コム)などの米企業で、仏勢はネット広告会社のクリテオだけだった。

米国は仏に対して19年12月、制裁関税を発動すると表明。トランプ大統領はマクロン仏大統領と直談判して「話し合いで解決できなければ、関税しかない」と迫った。仏は結局、米企業への課税を21年まで先送りした。

各国が独自課税を急ぐのは、国際課税ルールづくりが遅々として進まないためだ。欧州では大企業の課税逃れへの有権者の不満が強い。税の抜け穴を政治的に放置できない事情も、独自の課税を招いている。

経済協力開発機構(OECD)は1月、巨大グローバル企業への課税強化案をまとめた。国ごとの売上高に応じ、税収を分配する仕組みで「IT企業に限らず幅広いグローバル企業を対象にすることで米国に配慮した」(OECD関係者)。

それでも米国は「現行ルールと新ルールのどちらかを企業が選択できる」という独自案を提案。日欧や新興国が「骨抜き」と一斉に反発し、むしろ米国と他国・地域の溝が鮮明になった。

■国際ルール「10月大筋合意」見えず

OECDは10月までの大筋合意をめざすが、米国は「(11月の)大統領選を前に、巨大企業が課税回避へ強烈なロビーイングをかけている」(ワシントンの法律事務所)。トランプ氏も「米企業には米国自ら課税する」と背を向ける。米大統領選前の早期決着は不透明さを増している。

OECD新ルールが実現すれば、世界の法人税収は1000億ドル増えるとされる。米国はその税負担の大半がGAFAなど米国勢に及ぶと危惧するが、国際ルールづくりが頓挫すれば、各国独自のデジタル課税も止まらなくなる。いずれにしろ米国勢の負担は増す。

トランプ政権はワンパターンのように制裁関税を振りかざすが、中国に加えて欧州やインド、ブラジルとまで関税合戦に突入すれば、米経済は疲弊が避けられない。新たな強硬措置の予告は米国が袋小路に追い詰められつつある証左でもある。

保存
共有
印刷
その他

電子版トップ



[PR]