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ジップエア、苦肉の貨物運航 そこに隠された狙いは

将来のためにまずは貨物専用機として就航する

日本航空(JAL)傘下の格安航空会社(LCC)、ジップエア・トーキョーが3日、旅客を乗せない状態で「貨物専用便」として初就航した。当初はタイのバンコクと結ぶ旅客便を目指していたが、新型コロナウイルスで日本人の渡航が原則禁止されたため方針転換した。あえて貨物便を飛ばす背景には、今冬にホノルル線へ参入する布石という意味がある。

バンコクに向けて飛び立つジップエアの機体

ジップエアは同日、機械部品や化学品などを満載に積み、成田空港からバンコクに飛び立つ航空機を報道陣に公開した。西田真吾社長は記者団に「旅客で就航したく準備してきたが、かなわず貨物便として就航させる。社員は前向きに捉えてくれている」と話した。

当初は5月に成田―バンコクでの初就航を予定していたが、就航延期を決めている。ジップエアが使う米ボーイングの中型旅客機「787-8」は一度に約20トンの貨物を運べる。旅客機の減便で航空貨物の輸送単価が上がっており、旅客を乗せない貨物専用便でも採算が合うと判断した。

親会社のJALでは3月から、旅客機を貨物専用便として運航している。5月には臨時便を合わせて約1200便が中国や欧米などに貨物を運ぶ役割を果たした。国際線の運航は世界的に落ち込み、JALでは国際線の9割を運休・減便している。この影響で従来は旅客機が運んでいた貨物も運べなくなり、臨時措置をとっている格好だ。

日本郵船傘下の日本貨物航空(NCA)などが貨物専用機を運航するが、それだけでは需要に追いつかないのが実情。ジップエアも平時ならば貨物だけを運んでいては赤字が避けられないが、現在は運賃単価が数倍に上昇しており、一定の貨物が運べる中型機から大型機ならば採算が合う。

貨物専用での運航は少なくとも6月いっぱい続く見通し。需要に応じて増便も視野に入れる。さらに旅客の回復状況によっては、例えば週4往復のうち旅客を乗せる便と貨物だけの便を共存させる可能性も示唆した。

7月には成田―ソウル便を就航させる予定だが、現状では韓国へのビザなし入国はできない。この状況が続けば韓国にも貨物専用便で飛ばす可能性がある。日韓輸送の需要は小さいが、日本や韓国で米国向けなどに積み替える貨物は一定の需要が見込めるとされる。

国際航空運送協会(IATA)によれば、世界の国際線の旅客需要が2019年の水準に回復するには24年までかかる見通し。本来の旅客機としてのデビュー時期が見通せないなか、貨物輸送で実績をつくり急場をしのぐ。

一時はJALの社内で「貨物需要を満たすためならばJALの機材を飛ばせばいい」という意見もあった。それでもジップエアが貨物専用便での初フライトに踏み切った背景には、20年の冬ダイヤでどうしても成田―ホノルル線を就航させたい事情がある。

ホノルル線を就航させるには「ETOPS」と呼ばれる認可事項をクリアする必要がある。長時間にわたって洋上を飛行する際に必要な認証で、一定期間の運航実績などが条件となる。認可には少なくとも6カ月以上が必要となる見込みで、冬ダイヤで就航させるには6月の就航がギリギリのタイミングだった。

ジップエアは一般的なLCCがアジアなど短距離路線を中心とするのに対し、欧米など中長距離路線で勝負する構えだ。長距離の空旅で乗客が疲れにくいように内装にもこだわっている。

席数は290席のうち18席が大手のビジネスクラスに当たる上級席で、180度リクライニングしてベッドのように使える。普通席もシート幅を大手と同じ31インチ(約79センチメートル)に設定した。こうした投資を無駄にしないためには、収益性が高いホノルル便を早期に就航することが欠かせない。

ジップエアは多くの海外の旅行客が上級席や普通席を利用する将来に向けて、貨物だけを運ぶ日々を乗り切る構えだ。

(吉田啓悟)

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