円滑な「墓じまい」ポイントは? トラブル注意

2020/6/4 11:30
保存
共有
印刷
その他

栃木県日光市の墓地での墓石撤去の様子(NPO法人やすらか庵提供)

栃木県日光市の墓地での墓石撤去の様子(NPO法人やすらか庵提供)

先祖の墓を整理する「墓じまい」が全国で広がっている。少子化や核家族化を背景に古里などで墓を継げる人が減っているほか、遠方にあるままではお参りに行きづらいという事情もある。一方で費用などを巡ってトラブルが生じることも少なくない。どう「しまう」べきなのか、気をつけたいポイントを探った。(朝比奈宏)

「こんなにかかるはずがない」。千葉県在住の70代男性は墓じまいの際、撤去費用として石材店から約80万円の見積もりを提示された。

相談を受けたNPO法人「やすらか庵」(千葉市)が現地で確認すると、1坪にも満たない小さな墓だった。費用は30万円前後が妥当と判断。石材店は寺の指定業者で、助言を得て男性が寺側と交渉した結果、撤去費は最終的に40万円程度に落ち着いたという。

墓じまいとは、墓から遺骨を取り出して墓石を片付け、敷地を更地に戻して寺や墓地の管理者に返すこと。その際、遺骨を別の場所に移す「改葬」も行われることが多い。厚生労働省によると、2018年度の改葬件数は約11万5千件で、08年度に比べ約1.6倍に増えた。

トラブルも生じている。墓じまいサービスを手掛けるまごころ価格ドットコム(東京・中央)が19年11月に墓じまいの経験者200人にインターネットで調査したところ、1割程度がトラブルに遭ったと答えた。

やすらか庵には墓じまいを巡る相談が6、7年前から増え始め、今や年間300件を数える。代表で僧侶でもある清野勉さん(60)は「金銭絡みの相談が多い」と話す。

自治体運営の公営墓地や、宗教法人などの民間霊園から墓を撤去する際は比較的スムーズに進むことが多いという。一方で寺院の場合、檀家をやめることでお布施として高額の「離檀料」を請求されるケースが一部にみられるという。

国民生活センターによると、千葉県在住の80代男性は「子供に世話をさせるのは気の毒」と墓じまいを寺の住職に相談したところ、離檀料として280万円を請求された。それまで毎年4万円の管理費を払い続けており、「高額で納得できない」と20年2月に同センターに相談を寄せた。

相続・終活コンサルタントの明石久美さんは「離檀料を求めない寺もあり、払う義務はない。相場があるわけでもない」と指摘する。ただ、寺の協力がなければ墓じまいはできず、「なぜ行うのか、事情を丁寧に伝えて理解を得ることが大切だ」と助言する。

家族や親戚に事前に理解を求めることも重要だ。説明が不十分だったり、「反対されるから」と伝えていなかったりするとトラブルを呼ぶ。

2年前、埼玉県在住の50代男性からの依頼でやすらか庵の清野さんが墓の撤去作業をしていたときのこと。男性の遠い親戚が墓参りに訪れた。墓じまいを知らされておらず、「言ってくれればよかったのに」と気を落とした様子だった。

親戚らに事前に伝えれば、墓の引き継ぎ手が見つかる場合もある。清野さんは「大変ではあるが、可能な限り遠い親戚にも事前に周知してほしい」と話す。

●費用「50万円以内」が4割
 墓じまいでは、墓石の撤去費や閉眼供養(魂抜き)のお布施、移転先の確保など様々な費用がかかる。終活関連サイトを運営する鎌倉新書は2019年12月、墓じまいや改葬の経験者にインターネットで調査(約400人が回答)。それによると、かかった費用は「50万円以内」が41%を占めた。「51万円以上」が32%で、残りは「わからない」だった。
 墓の規模や依頼先の業者によって撤去費用は変わる。墓じまい後、遺骨をどうするかによっても大きく異なる。散骨や永代供養は比較的安く済むが、新たに墓所や墓石を購入する場合は膨らむ。
 調査では、墓じまいなどにかかった期間は「1カ月以上3カ月未満」が42%で最多で、「1カ月未満」が28%で続いた。「1年以上」も18%あった。鎌倉新書の担当者によると、役所での手続きに必要な書類の準備や、寺との話し合いなどに時間がかかるケースがある。
保存
共有
印刷
その他

関連企業・業界 日経会社情報DIGITAL

電子版トップ



[PR]