三井化学、自動車向け事業にコロナ禍 ICTに商機

2020/6/2 19:50
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三井化学の橋本修社長は2日に開いた経営概況説明会で「2021年3月期は自動車の生産が2割落ち込むとみている」と語り、自動車関連事業で新型コロナウイルスの影響が大きいとの認識を示した。一方で高速通信規格「5G」などICT(情報通信技術)関連の素材には力を入れ、5~10年後に売上高を1000億円規模に育てる方針を明らかにした。

経営概況を説明する三井化学の橋本修社長

三井化学が生産する不織布を使った医療用ガウンのイメージ

三井化学は主力の自動車向け素材を手掛ける「モビリティ事業」の21年3月期の営業利益が275億円と、前期比で36%減少すると見込んでいる。橋本社長は「上期は厳しい。下期には徐々に回復するだろうが、数年は厳しいかもしれない」との見通しを語った。

それでも橋本社長によれば「自動車市場自体は悲観していない」。電動化や自動化といった一連の「CASE」の流れはコロナの影響を受けても変わらないとみる。素材の軽量化などを推進する組織横断型の事業体制を整えていくという。

石油化学では、基礎原料などを手掛ける「基盤素材事業」は今期の営業利益が原油価格の下落に伴う市況悪化で115億円の赤字に転落する見通しだ。橋本社長は「20年度内にはボラティリティ改善へ生産の再構築方針を固める」と述べた。

今後は財務面でも景気減速への対応を進める。21年3月期の投融資額は、5月の20年3月期決算発表で示した1220億円よりも一段と減少させる方針だ。緊急対策として案件の厳選や繰り延べを検討し、コストダウンを進める。資金の流動性を確保するため、銀行から融資を引き出せる追加のコミットメントライン(融資枠)を1000億円規模で確保したことも明らかにした。

一方で、成長事業にはシフトする。ICT関連素材では半導体の製造工程で使われるフィルムやカメラレンズ材料の生産能力を相次ぎ増強している。橋本社長は現状で数百億円台の売上高を「5~10年で1000億円規模に育てたい」と明言し、次の強化事業に位置付ける考えを示した。

その他の成長事業として医療関連機器も強化する。新たに医療事業戦略グループを作り、整形外科関連の材料や細菌感染を迅速診断するシステムなどを展開する。必要に応じてM&A(合併・買収)も視野に入れる。

コロナ禍でマスクと防護服に使う不織布や消毒液などの需要が世界的に高まっている。現在は不織布をはじめとしたコロナ対策製品を供給しているが「赤字では事業として続かない」(橋本社長)。黒字化に向けた手を打つ姿勢を示した。今後はマスクの鼻に当たる部分に使われる形状記憶素材や不織布の生産増強などを考えるという。

2025年までの10年間の長期経営計画については「5Gや人工知能(AI)の進展、新型コロナの影響も加味して見直していきたい」と語った。コロナは幅広い業種の事業環境を一変させた。三井化学も戦略の再構築を迫られている。

(福本裕貴)

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