着陸料割引の新千歳空港、視界不良の再出発

インバウンド
2020/6/2 16:32
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完全民営化初日の新千歳空港も人はまばらだった(1日、新千歳空港)

完全民営化初日の新千歳空港も人はまばらだった(1日、新千歳空港)

完全民営化で新千歳空港(北海道千歳市)を引き継いだ北海道エアポート(HAP、同市)にとって、航空会社が支払う着陸料は虎の子の収入源だ。新たな事業計画には初めて、新規就航1年目の着陸料を全額免除する路線誘致策を盛り込んだ。新型コロナウイルスの感染拡大で国際線ゼロの大逆風は続いており、どこまで早期に回復させられるかが焦点だ。

着陸料の減免制度は主に訪日外国人(インバウンド)誘致策として国内の主要空港が相次いで導入している。HAPは北海道への新規路線であれば4年間、段階的に料金を割り引く。運航1年目は全額、2年目は75%と段階的に下げ、5年目以降は通常料金とする。利用の少ない深夜と早朝の時間帯は運航から5年間は半額に据え置く。

路線開設が相次いでいた格安航空会社(LCC)の利用を見込んだものだが、新型コロナの感染拡大で一転して、強い逆風に見舞われている。春秋航空(中国)や済州航空(韓国)などのLCCは相次いで運休。国際線の発着は3月にゼロとなり、国際線ターミナルは閑散としたままだ。

「ゼロではなく、マイナスからの出発だ」と蒲生猛社長は気を引き締める。2019年12月に運航を開始したフィンランド航空も東京、名古屋、大阪とヘルシンキを結ぶ路線は7月から復便予定だが、新千歳路線は見通しが立っていない。蒲生社長は20年度中に便を復活させる航空会社は3割程度にとどまるとみている。

6月から始まった滑走路や保安設備の管理・運営の最大の利点は空港を離着陸する航空会社から得られる着陸料や保安料にある。旅客数に応じた金額を得られる仕組みで、利用者が多ければ多いほど利益につながる。

訪日客の急増で新千歳は急成長してきた。国土交通省によると、民営化前の18年度の新千歳空港の営業利益は16億円(17年度比27%増)。国が管理する空港では羽田空港に次いで高い。営業収益のうち着陸料などの収入は直近5年間で右肩上がりで推移し、18年度は100億円超と全体の91%を占めていた。

HAPが1日公表した事業計画には新型コロナの影響が織り込まれておらず、20年度の旅客数は7空港で18年度比7%増の計3114万人、24年度までに18年度比20%増の3490万人とバラ色の数字が並ぶ。24年度の新千歳の旅客数は全体の80%にあたる2783万人。HAPの蒲生社長は下方修正の方針を示しているが、新千歳への依存度の高さは変わらない。

完全民営化の初日となった6月1日時点で国際線の発着便はゼロのままで、国内線も前年比74%減の96便にとどまる。事実上の国境封鎖が続く国際線のみならず、緊急事態宣言による出張や旅行の自粛が完全に解除されても国内線の低迷は続くとみている。

日本航空(JAL)は1~14日に北海道内発着便で1494便を減便する。うち1020便が新千歳発着で、当初発着予定の約71%が減便となる計算だ。6月15日以降の運航予定の減便も検討しており「緊急事態宣言の解除後も予約数はそれほど増えていない」(同社広報担当)のが現状だ。

国際航空運送協会(IATA)は世界の国際線の旅客需要が19年の水準に回復するのは24年との見通しを示している。着陸料が収益源として稼働するのには時間がかかりそうだ。

(塩崎健太郎、久貝翔子)

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