パワハラ対策、大企業で義務付け 非該当事例に懸念も

大企業のパワーハラスメント(パワハラ)防止対策が6月1日、法的に義務付けられた。相談件数も増加し、企業はすでに研修の強化などを急いでいる。一方で厚生労働省が事例の線引きを示したことがパワハラを助長するとの懸念も根強い。
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職場でのパワハラ防止を定める関連法が施行された。大企業は厳正な対処方針を策定したうえで予防研修、相談窓口の設置といった対策を講じなければならない。悪質な事例については国が企業名を公表できる。中小企業について2021年度までは努力義務とし、22年度から適用する。
男性新入社員の過労自殺が起きた三菱電機は今回の義務化に先立って1月にパワハラ再発防止策をとりまとめた。社外の専門家に相談できる窓口を設け、研修も課長職以上から全従業員に拡大した。
全日本空輸(ANA)は5月からグループ全役職員へのeラーニングを始めた。日本郵便は6月中に全国2万4000郵便局の休憩室などにハラスメント担当者らの連絡先を掲示する予定という。
法整備の実効性を疑問視する声も残る。厚労省は「殴打や相手に物を投げつける」ようなケースをパワハラにあたる代表例として示した。一方で「誤ってぶつかる」などの場合は該当しないと説明していることが、パワハラを疑われた側が否定する根拠になる恐れがある。東京法律事務所の笹山尚人弁護士は「該当しない例を示したのは適切ではなかった」と話す。(「パワハラ指針案、労政審が了承 労働側の批判押し切る」参照)
新型コロナウイルスの影響で企業活動が停滞していることもパワハラにつながる恐れがある。笹山弁護士は「経営が厳しくなると立場の弱い人にハラスメントが向かいやすい」と懸念する。
厚労省によると、全国の地方労働局などに寄せられたパワハラを含む「いじめ・嫌がらせ」の相談件数は、18年度で約8万2千件と過去最高を更新した。