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異例の長期休校明け、揺れる心に目配りを

新型コロナウイルスに関する緊急事態宣言が解除され、東京都内で1日、多くの公立学校が授業を再開した。コロナに対する不安の中、異例の長期休校によって子どもたちの心は様々な影響を受けている。学校再開による生活の変化に不安を抱える親子は少なくない。不登校やいじめなどのリスクも懸念され、学校側は相談態勢を手厚くするなどの対策を急ぐ。

「コロナが怖いから、学校に行きたくない」。東京都のパート従業員の女性(38)は1日、約3カ月ぶりの登校から帰宅した小学3年の次男の言葉にショックを受けた。手洗い場や玄関が混んでいたのに不安を感じた様子。校長が朝会で「コロナに負けず勝ちましょう」と呼びかけた言葉にも「どうやってコロナに勝てばいいの?」と混乱したようだった。

東京都豊島区の小学4年の男児は1日朝、「だるい」「だるい」と言いながら久しぶりの学校に向かった。休校中は昼夜を問わず携帯ゲームに没頭し、生活リズムが乱れて前夜も寝付けなかった。母親(37)は「早く元の調子を取り戻さないと」と焦っている。

「新しいクラスで友達ができるだろうか」「宿題が終わってないが勉強について行けるか」――。18歳以下の無料電話相談に応じる「チャイルドライン」には5月中旬以降、学校生活の悩み相談が増えた。

運営するNPO法人、チャイルドライン支援センターの高橋弘恵専務理事は「長引く休校で時間が余り、悩みを深めすぎた繊細な子が目立つ。新生活になじむには通常の新学期以上に相当なエネルギーを要するのではないか」と懸念する。

長期の休み明けは子どもの自殺が急増しがちだ。政府の「自殺対策白書」によると、18歳以下の自殺は夏休み明けの9月1日が最も多い。文部科学省は5月27日付で全国の教育委員会などに▽自殺予防▽不登校▽児童虐待▽差別・偏見――などについて注意を促す通知を出した。

再開時期が不透明だった今回の休校は夏休み以上に子どもの心が不安定になりやすいとして、スクールカウンセラーやソーシャルワーカーなどと連携した心のケアの態勢整備を求めている。

都教委は都立学校向けにガイドラインを策定。再開にあたって児童や生徒の心身状況の把握や心のケアに配慮するよう求めた。各学校は無料対話アプリ「LINE」で臨床心理士らが対応する「相談ほっとLINE@東京」の活用などを周知する。

練馬区は児童や生徒の悩み相談を受ける有償ボランティアの「心のふれあい相談員」の勤務時間の上限を週14時間から28時間に倍に延ばし、スクールカウンセラーの不在時も相談を受けられるようにした。区の担当者は「休校以降、子どもたちからの相談が増え、改めて心のケアの重要性を感じた」と話す。

九州産業大の窪田由紀教授(臨床心理学)は「生活リズムの乱れや学習の遅れ、対人関係など、全ての子どもが何らかの不安を抱えているが、『先生や親も大変だ』と感じてSOSを発しにくい」と指摘。「教師は短時間でも良いので全ての子どもに声かけし、保護者も食事や睡眠などに変化がないか普段以上に気を配ってほしい」と話している。

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