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やってみた10万円申請 中高年はスマホよりPCが楽?

2週間たたずに振り込まれた特別定額給付金

10万円の特別定額給付金の申請が「誤記しがちな仕組み」「自治体の負担が膨大」「窓口の3密を招いた」など、様々な形で話題になっている。オンライン申請の分かりにくさもその一つで、誤入力が多いことからオンライン申請の受け付けを取りやめた自治体も複数あるほどだ。筆者もスマートフォンで試してみたが、2時間苦闘すれども申請できずに終わった。諦めてパソコンで申請してみたら今度は30分かからずに終わるなど、「スマホ申請システム特有の難解さ」も強く感じた。今回はその顛末(てんまつ)記を書いてみよう。

何を使うか、事前準備も大事

筆者の住む東京・杉並区では5月11日から受け付けを開始したので、12日の晩に早速試してみた。「どこからオンライン申請するのか」でまず悩んだが、正解は住んでいる自治体のサイトではなく総務省の「特別定額給付金サイト」。このサイトでは市区町村の対応状況も分かるし、郵送での申請方法も詳しく書いてある。

数年前のICカードリーダーでも無事申請できた。ただし「e-Tax対応」「マイナンバーカード対応」などと書いてあることが大事

大事なのはオンライン申請を何で行うか。パソコンとICカードリーダーで申請するのか、新しめのスマホ(iPhone、Android端末)を使うのかだ。新しめというのは、iPhoneであれば「iOS 13.1以上がインストールされたiPhone 7以降のもの」となっていて、これより古いと非接触でICカードを読み込むための「NFC機能」が非搭載なので使えないからだ。iPadもNFC機能がないから使えない。Android端末での対応機種リストは上記サイトにあり、おおむね2016年後半以降に発売された機種なら大丈夫のようだ。

さてどちらを使う場合でも、以下のものが必要になるので先に用意しておこう。

マイナンバーカード(署名用電子証明書の期限が切れておらず有効なもの。引っ越しや結婚でこれが失効していると窓口に行って手続きするまでオンライン申請できない)
マイナンバーカードの暗証番号(4種類あるうち、券面事項入力補助用の4桁の数字と、署名用電子証明書の6~16桁の英数字を使う)
通帳かキャッシュカード(10万円の振込先口座番号が自分に分かるもの)
振込先口座の確認書類(口座番号やカナ氏名が窓口の人に分かるもの。通帳やキャッシュカードの写真、インターネットバンキングの画面キャプチャなど)

準備ができたらいよいよ申請だ。パソコンの方が確実にできそうな予感はしたが、「スマホを使う人の方が多いだろう」と思い直し、iPhoneXS MaxとDoCoMo回線+自宅Wi-Fiという環境でチャレンジしてみた。前述のサイトにあるQRコード経由でスマホに「マイナポータルAP」というアプリを入れ、その中の「ぴったりサービス」というコーナーで手続きを進める。細部は省略するが、大まかな流れとしては以下のようになる。

(1)郵便番号を入れて住んでいる地域を検索(プルダウン入力も可能)
(2)「ぴったり検索」タブから赤字の「特別定額給付金」にチェックを入れて検索し、申請画面に進む
(3)動作環境、マイナポータルAPのインストールなどを確認した後で連絡先のメールアドレスか電話番号を入力
(4)申請者情報をマイナンバーカードから読み取る(ここで券面事項入力補助用の4桁数字の暗証番号を使う)。全て手入力することも可能
(5)フリガナ、郵便番号が空欄なので入力
(6)妻など他の給付対象者の名前、受取口座の情報(金融機関名や口座番号)を入力
(7)口座確認用の添付書類を登録する。預金通帳の写真などを選び、マイナンバーカードと署名用電子証明書の暗証番号を使って電子署名を付与する
(8)「送信を実行」する。受付番号が表示されたら申請完了

この通り、操作ステップと手入力する部分が多くてなかなか大変だ。マイナンバーカードのICチップには個人情報が一通り入っており、それをスマホで読み取って送る程度の作業だと勝手に思っていたが、違ったようだ(これは紛失時などのセキュリティ確保のためらしい)。実際はこのICチップは電子的な鍵のようなもので、マイナンバーがまだ口座番号などとひも付いていないというのは現在報道されている通り。それにしてもスマホの小さな画面で多くの個人情報を手入力するのは、老眼気味の中高年には地味にこたえる。確認画面がやたらと多いのにもうんざりしてくる。

4種類の暗証番号も落とし穴

マイナポータルAPの画面。ここで「ぴったりサービス」を押して入力を始めると、実はSafariに飛んでいる。この辺が分かりにくい

同時期にオンライン申請した50代の金融のプロにも聞いてみた。「そもそもマイナポータルAPとブラウザのSafariの2つのアプリを行ったり来たりしながら進める点が分かりにくい。スマホ世代の若者は別だろうが、中高年には難解な仕様。私の場合は初日に1時間半かけたが終わらず、2日目に再度30分かけてようやく申請できた」(税理士法人アーク&パートナーズの代表社員税理士、内藤克氏)。この仕様のため、エラーが出始めるとどこからやり直せばいいのか分からなくなってしまうのだ。

マイナンバーには複数の暗証番号があるのも話をややこしくしている。4桁数字だけでも今回の券面事項入力補助用のほか、利用者証明用電子証明書、住民基本台帳用と3種類ある。3つを同じにしていたズボラな筆者は間違えずに助かったが、それぞれ違う数字に設定していると「この場面で使うのはどれだっけ?」となりがちだ。入力を3回連続で間違うとロックされて窓口で再設定しなければならず、一時期これが3密の原因になっていた。

さらにもう1つ、署名用電子証明書の6~16桁の英数字のものがあり、英字はパスワードの常識を超えた「大文字のみ」。こちらは5回連続で間違うと窓口行きになるが、個人のブログなどを見ているとここで引っ掛かった人も多いようだ。そもそもマイナンバーカードの申請時に電子証明書を「不要」として申請した人は、カードは持っていても「そんな暗証番号、決めた覚えがないぞ?」ということになって混乱する。この辺も1つの落とし穴になっている。

謎のタイムアウトに悩まされる

最大の問題はマイナンバーカードの読み取りが難しいことだ。筆者の場合はカードとスマホの位置関係が悪かったようで、初回は読み取りエラーが出た。Suicaのように宙に浮かせたままでは不安定になりがちなので、出てくる案内図に従ってカードの上にスマホを置いてしまった方がいいようだ。2度目はうまくいったか……と思ったら今度は「セッションタイムアウトが発生しました」という謎のメッセージが出て、最初からやり直しに。心が折れるってこういうことかなと思いつつ、10万円のためなら……とチマチマやり直しても、最後にはまたセッションタイムアウト。これには困った。昔、パソコン雑誌の編集者だった筆者にも、何が悪いのかメッセージからつかめないからだ。

スマホか、回線か、机のせいか(金属製だと読み取れないようだ)などさんざん考えたが原因が分からず、3度目の苦行入力の最後にまたタイムアウトになったので、ここでスマホ申請は諦めた。後日、会社で聞くと同僚Aさんも「母親のカードで代理申請しようとしたがやはり読み取りができず、暗証番号も3回間違えたので諦めた」ということだった。しかし一方、Bさんは「指示通りに進めていったら、画面キャプチャーを撮りながらでも30分程度でスマホ申請できた」と言う。

画面左下の「プライベート」の文字が今のように見えていればOFFだが、白ベタになっているとONでエラーが出やすい

この違いが一体何のせいなのか、後日ネット検索する中で個人ブログで見つけたのが「SafariのプライベートブラウズがONだとタイムアウトになる」という情報。Safariの画面右下には複数のページを切り替え表示するアイコンがあるが、それを押した時に出る画面の左下に「プライベート」という文字がある。ここが押されて白ベタになっていると、検索履歴を残さずにサイトを見られるプライベートブラウズ(AndroidのChrome9の場合はシークレットモード)という状態になっていて、タイムアウトエラーが出やすいらしい。事実、ここをOFFにしてテストしたらカードは1回で読み取れた。こんなに分かりにくくかつ大事なことは、全員が見る場所に大きく書いておいてほしかった。

「とはいえ今はこういう個人ブログやSNS上の経験談に助けられている部分が相当ある。昔のようにそれがない時代なら、役所の窓口がどんな混雑になっていたか想像も付かない」(内藤税理士)。ちなみに苦情が殺到したのか、現在はマイナポータルAPの「動作環境の確認」の中にこのチェック項目が追加されている。

パソコン申請はほぼエラーなし

さてパソコン(Mac Pro)での申請に切り替えてからは、極めて早く処理が進んだ。筆者は「いずれe-Taxの申請に使おう」と思って数年前にICカードリーダーを買っていたので、それを引っ張り出してきて接続。少し前のWindowsではこの時にインストールされるドライバの相性でうまく動かないこともあったようだが、最近はそういう話も聞かない。Macではドライバのインストールもなく、USB接続したら即認識した。続いてパソコンでもやはりマイナポータルAPというソフトをインストール。こちらは単体では起動しないSafariの機能拡張ソフトだ。

三菱UFJ銀行のインターネットバンキングではこのような通帳イメージ画像がダウンロードできる

またパソコン申請でいいのは、うまくいかない時「何が問題か」を診断してくれ、「どうすればいいか」が画面に出ることだ。今回も「Safariの機能拡張があと2つ足りない」と出たので指示通りにそれをインストールしたら、後は実にスムーズに進んだ。泣かされたカード読み取りも全くエラーにならず一瞬で終わり、所要時間はトータルで25分程度。インターネットバンキングの取引画面を送るのは残高や引き落とし先が出るのでちゅうちょしたが、三菱UFJ銀行の場合は「Eco通帳」に切り替えていると「通帳表紙イメージ」がダウンロードできる。これを添付して送れば余計な情報が渡らないので安心して進められた。

このICカードリーダーは現在品切れということもなく、通販サイトで1500~3000円程度で買える。なのでパソコンがある人は思い切って買ってしまい、スイスイ申請する方が血圧が上がらず楽ではないだろうか。特別定額給付金の申請期限は各自治体の郵送での受付開始日から3カ月以内なので、まだ時間的余裕もある。友人のICカードリーダーを一時借りても申請はできるが、持っていれば今後e-Taxにも使えるし、秋以降「再びあるかもしれない給付金のオンライン申請」にも使えるからだ。

最後に、肝心の給付金は5月25日の朝に振り込まれた。12日夜の申請から2週間かからなかったことになり、他の人の話と比べるとこれは割と早かったようだ。この点は杉並区に感謝したいが、その杉並区は「郵送申請の書類は既に発送済みだし、審査が煩雑になるから」とオンライン申請の受け付けを5月31日でやめてしまった。残念だ。なお、振り込まれた数日後には証券会社から営業電話がかかってきたことも付記しておこう。

大口克人(おおくち・かつひと)
日本経済新聞社編集局 マネー編集センター副センター長、日経BP「日経マネー」発行人。1991年に日経マネー編集部に配属され、以降は日経ゼロワン編集長、日経マネー編集長や日本経済新聞社マネー報道部長などを経て現職。30年近くにわたり個人の資産形成を取材。
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