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プロスポーツ再開のリスク 連戦で免疫機能低下も

2020/6/4 3:00
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新型コロナウイルスの影響で延期されていたプロ野球の開幕日が6月19日に決まった。サッカーのJ1も7月4日のリーグ戦再開を発表した。ただ、新型コロナのウイルス検査でプロ野球巨人やJ1名古屋の選手の陽性反応が明らかになるなど、確実に再開できるかは予断を許さない情勢になってきた。開幕や再開に無事こぎつけられたとしても、懸念されるのは過密日程が組まれることによる選手の感染リスク拡大やケガの増加だろう。選手の心身の負担を減らす施策が不可欠となる。

「試合やトレーニングをすると体が弱って免疫が落ちる。そういう意味で、僕ら選手は試合後の体調管理にこれまで以上に気をつけないといけない」。J1神戸のDF酒井高徳は5月下旬のオンライン取材で、新型コロナに感染した自身の経験を踏まえ、リーグ戦再開後の選手のリスクについて警鐘を鳴らした。

オンライン取材で、リーグ戦再開後の選手のリスクについて言及した神戸の酒井=(C)VISSEL KOBE

オンライン取材で、リーグ戦再開後の選手のリスクについて言及した神戸の酒井=(C)VISSEL KOBE

普段から厳しい鍛錬を重ねるトップアスリートは一般の人に比べて体が丈夫だと思われがちだが、早大スポーツ科学学術院の赤間高雄教授(スポーツ医学)は「激しい運動後に免疫機能の低下が起こる時間帯があり、アスリートはむしろ風邪をひきやすい」と指摘。免疫機能の低下を防ぐには十分な栄養と休養をとることに加え、長距離走など持久性の練習を減らすといった対策も必要だという。

赤間教授は「アスリートが新型コロナに感染しやすいというエビデンス(根拠)はない」と前置きしたうえで、「(野球やサッカーの選手は)チームでの行動が多くなるため、感染症にかかりやすい環境に置かれているのは事実」と話す。常に体を鍛えているプロスポーツ選手だから新型コロナに感染しにくいということはあり得ない。実際、開幕や再開前から選手の感染が次々に判明し、感染リスクはスポーツ選手も例外ではないことははっきりしている。

それでも開幕や再開する場合は特例措置を設け、選手にかかる心身の負担を少しでも軽減することが欠かせない。プロ野球とJリーグが共同で開く「新型コロナウイルス対策連絡会議」の専門家チームも免疫機能低下やケガを防止する観点から選手の負担を減らす特別ルールの適用を提言。Jリーグは交代枠(通常は1試合3人)の拡大を、プロ野球は延長戦の取りやめや試合時間の制限を検討している。ただ、こうした施策で感染を完全に防ぎきれるかは不透明だ。

長期間の自宅待機で「オフシーズンの体に戻ったような感覚」と、コンディション面の不安を漏らす選手も多い。そこから約1カ月で急ピッチにコンディションを上げ、開幕や再開までに万全の状態に仕上げる必要がある。C大阪のMF清武弘嗣は「交代枠5人という話も聞いている。最初はうまく選手をまわしながら、みんなで徐々にパフォーマンスを上げていくしかない」と、総力戦で選手個々の負担を減らす戦略が必要だと強調した。

阪神の矢野監督(中央)は「張り切る選手のケガが心配」と語る=阪神球団提供

阪神の矢野監督(中央)は「張り切る選手のケガが心配」と語る=阪神球団提供

準備期間が短い一方、プロスポーツ興行が危機にある中で選手たちは少しでもいいプレーをみせたいという意気込みが強いはず。こうした特殊な状況で、選手のケガを心配するのはプロ野球阪神の矢野燿大監督だ。5月中旬のオンライン取材で「(実戦的な練習が再開されたときは)みんな張り切り過ぎてケガにつながる可能性がある。そこは我々の出番なのかなと思う」と語った。選手の意欲は大事にしつつも、はやる気持ちをセーブすることも監督やコーチの重要な役割といえそうだ。

プロ野球は6月の開幕から11月の日本シリーズ開幕前までに120試合を消化することになった。過密日程が避けられず、連戦で故障者が増えることも予想される。シーズン終盤に疲労で失速しないためにも、例年以上に選手の体調に配慮した起用が求められそうだ。ロッテの井口資仁監督は「選手を疲れさせない、疲労をためさせない起用法が一つの課題になる」と話す。

過密日程とは別の懸念を指摘する声もある。DeNAのエース今永昇太は「例年より暖かい時期に開幕し、興奮もあるので、自分が思った以上の力が出るかもしれない。(出力に)耐えられる体かどうかや筋肉の使い方を考えないと、投手なら肩肘のケガ、野手なら肉離れにつながるかもしれない」とみる。過去に例がない状況だけに、感染やケガの防止へ関係者の手探りが続きそうだ。

(田村城、木村慧)

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