ポストコロナへの宿題、教訓生かし危機管理を

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コラム(社会・くらし)
2020/5/31 2:01
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人工呼吸器などの供給の多くは海外に依存している=ロイター

人工呼吸器などの供給の多くは海外に依存している=ロイター

昨年12月に中国湖北省武漢市で肺炎患者の集団発生が報告されてから5カ月、「未知の感染症」の姿が徐々に見えてきた。

厚生労働省が公表した「新型コロナウイルス感染症診療の手引き(第2版)」などによると、(1)従来考えられていたほど致死率は高くないが、感染力が強く一気に広がる(2)無症状や軽症者の割合が多い(3)感染後2~5日目から発熱、せきなどの風邪症状や息苦しさなど肺炎症状が表れる(4)発症から1週間ほどで約8割は回復に向かうが、約2割が重症化して入院、さらにその一部は人工呼吸器の装着が必要になる(5)症状が全身に波及し、脳梗塞や心不全、肝不全などを発症、多臓器不全に陥る人も少なくない――などである。

感染拡大が収まったとして政府は緊急事態宣言を25日に全面解除したが、秋以降の第2波・3波は避けられない、と感染症の専門家は口をそろえる。

人類は繰り返し感染症のパンデミック(世界的流行)を経験。過去40年でもエイズ(1981年)、高病原性鳥インフルエンザ(97年)、SARS(2003年)、新型インフルエンザ(09年)、MERS(12年)と大きな流行が続いている。

「今後も新たな感染症パンデミックに見舞われる恐れがある」。浜田篤郎・東京医科大教授が警告する。「そのためにも今回の教訓を"次"に生かさなければならない。新型コロナウイルスの毒性がこの程度だったのは幸運で、もっと強毒だったら人類の命運にかかわるところだった」

今回の反省点としては、当初、症例の定義を武漢・湖北省への渡航者と濃厚接触者に限ったり、帰国者・接触者相談センターに相談する目安を「37.5度以上の発熱が4日以上続く」などとしたりして、PCR検査のハードルを上げてしまい検査数が伸びなかったことなどが指摘されている。

医療関係者向けの高機能マスクや防護服、消毒液、人工呼吸器などの不足もあらわになった。日本総合研究所と日本医師会総合政策研究機構はこれらの需給状況を調査し、4月に「産業力で医療崩壊を防止する緊急提言」をまとめた。浮かび上がったのは、医療資機材の多くの供給を海外に依存している現実だ。

提言は資機材の需要急増時に販売・生産に即応できる企業を登録しておいて、緊急事態が起きたら即座に発注する仕組みをつくったり一定量の備蓄や供給力を増強したりするよう求めている。不足する資機材やその代替品の寄付の受け付けや広範な資金調達のための仕組みづくりも盛り込んだ。

日本大危機管理学部の福田充教授は「危機のさなかでは冷静に合理的に判断することができない。感染拡大が一服した今こそ、対策をきちんと議論し、国民に丁寧に説明すべきだ」と強調。「情報を国民に広く伝えて納得してもらい、合意を形成するリベラルな危機管理のアプローチがリスクコミュニケーションの要諦だ」と話している。

「次」に向けた宿題は少なくない。(木村彰)

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