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タイ、コロナで芽吹くロボ産業 消毒液運搬や検温

NIKKEI BUSINESS DAILY 日経産業新聞

新型コロナウイルスの感染拡大を契機に、タイでロボットの開発や利用が進んでいる。ロボットはタイ政府が掲げる10の戦略分野の1つだが、開発はあまり進んでこなかった。小売店で体温、マスクの着用をチェックしたり、次世代通信規格「5G」を使って遠隔診療したりするロボットが相次ぎ登場している。切羽詰まった状況が開発を促したもので、外資に頼ってきたタイのものづくりに変化をもたらしそうだ。

4月下旬、バンコクのスーパー「トップスマーケット」の店先に見慣れないモニター付きの装置が登場した。新型コロナウイルスの感染拡大を受け、これまで店員が手作業で実施していた検温を自動化。来店した客がモニターに顔を近づけることで自動で体温を測定。37.5度を超えている場合には警報を鳴らし、入店を防ぐ仕組みだ。

この装置はタイ小売最大手、セントラル・グループ傘下のセントラル・テックが開発したもの。顔認証機能を使い、マスクを着用していない場合にも警報で入店を食い止める。セントラル・グループは5月末までにスーパー「トップスマーケット」やコンビニ「ファミリーマート」など、バンコクを中心とした計15店舗に装置を導入する計画だ。

セントラル・グループが開発した体温測定装置(バンコク)

17日に営業を再開したバンコクの商業施設「セントラル・ワールド」にはタイ通信最大手のアドバンスト・インフォ・サービス(AIS)が開発した四足歩行ロボットを配備した。背中に手の消毒ジェルを乗せ、買い物客のもとへと運ぶ。さらに一部店舗には紫外線殺菌ロボットを導入し、店内の消毒を進める。「従業員と顧客の安全を確保するため新しい技術を導入した」。セントラルは胸を張る。

セントラル・グループが導入した紫外線殺菌ロボット

医療現場を支えるロボットの開発競争も始まっている。AISは3月、タイの最高学府チュラロンコン大学などと組み、遠隔医療用ロボットの実証実験を始めた。高速・大容量を特徴とする次世代通信規格「5G」を活用し、自動で患者のところまで移動して検温できるようにしたほか、ビデオ通話で問診もできるようにし、医療従事者の2次感染リスクを抑える。

AISは同ロボを「タイで最初の5Gロボット」とうたう。5月初旬までに22病院に計23体を導入する計画。病院の需要に応じて、薬や衛生用のアルコールジェルの運搬機能や血中酸素飽和度の測定機能などを搭載することもできるという。ロボット開発に関わるAISのワシット氏は「将来、タイの医療現場で起こるニューノーマルを作れたことをうれしく思う」と言及。「今後は音でのロボット制御やオゾンと紫外線を使ったセルフクリーニング機能なども検討している」と、機能拡張に意欲を示す。

同じく3月に5G商用化に乗り出したタイ通信2位のトゥルー・コーポレーションも医療用ロボットの開発に着手した。ビデオ通話での診療のほか、遠隔操作で食品や医療機器を運ぶロボットを作り、先行するAISに対抗する。

バンコクの商業施設に導入された5Gロボットは客に手の消毒ジェルを運ぶ(5月17日、バンコク)=小高顕撮影

チュラロンコン大学の学生も独自のロボットを開発した。工学部の学生らが食事や薬を運搬する「ピントー(弁当)」、医師と患者のコミュニケーションに使う「ノン・クラジョーク(ガラスちゃん)」、血圧や体温などのデータを医師に送る遠隔通信ロボット「ニンジャ」の3種のロボットを製造。4月には卒業生などが中心となって寄付を集め、103台を病院に寄贈した。

タイはロボットや医療などハイテク10分野を重点産業として掲げて投資を優遇するが、これまで自国でのロボット開発では後れをとってきた。新型コロナの流行前からロボット開発を手掛けてきたCTアジア・ロボティックスのチャラムポン最高経営責任者(CEO)は日本経済新聞社の取材に対し、「タイの企業はロボットづくりに挑戦してこなかった。タイでは優秀な学生は外資系や財閥系の有名企業への就職を選んでしまい、自らロボットを開発する道に進む人は少ない」と語る。

新型コロナはロボットなどハイテク産業の開発で外国企業に頼ることに甘んじてきたタイの意識を変え始めているのかもしれない。

(バンコク=岸本まりみ)

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