山形の百貨店「大沼」再生交渉浮上 山形銀の出方カギ

2020/5/28 19:52
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東京の商業コンサルが土地建物を取得し再生する動きが表面化した大沼(28日、山形市の閉店した店舗)

東京の商業コンサルが土地建物を取得し再生する動きが表面化した大沼(28日、山形市の閉店した店舗)

今年1月に破綻した山形市の百貨店「大沼」について、再生に向けた交渉が事業者間で進んでいることが28日、わかった。大沼の土地建物を巡っては担保を設定している山形銀行が3月、競売にかけると表明したことで、営業再開はほぼ絶望的とみられていた。ただ、山形市の佐藤孝弘市長が歓迎する意向を示すなど地元では期待が高まっており、山形銀は難しい判断を迫られそうだ。

名乗りを挙げたのは東京の商業コンサルタント会社やまき(東京・港)。2019年に青森県八戸市の百貨店、三春屋の経営を引き継ぐなど各地で商業施設の再生や運営を手掛けている。破綻直前の大沼の支援に乗り出し、現在、土地建物を保有する山形市内の実業家と交渉を進めている。

やまきは6月中に再生案の概要を示したいとしている。新型コロナウイルスによる経済環境の悪化など不透明な面はあるものの、来春にも百貨店として営業を再開したい考えだ。

こうした再生に向けた交渉はほかにも進んでいたが、山形銀が競売にかけると表明したことで頓挫したかにみえた。長谷川吉茂頭取は「フェアにやるには競売しかない」といい、中心市街地を象徴する物件を巡っては、透明性の確保が必要と判断した。

商工会議所、商店街振興組合のトップと急きょ会談した山形市の佐藤孝弘市長(28日、市役所)

商工会議所、商店街振興組合のトップと急きょ会談した山形市の佐藤孝弘市長(28日、市役所)

交渉が表面化した28日、山形銀は「競売の方針に変わりはない」(経営企画部)との考えを示した。ところが、山形市の佐藤市長は同日午後、山形商工会議所会頭、地元の七日町商店街振興組合理事長と急きょ会談。佐藤市長は会談後、「百貨店再生という市民にとって最もよい方向が検討されている。アフターコロナの中心市街地の起爆剤になる」と期待感を示した。

商議所の矢野秀弥会頭も「跡地は最低限でも商業施設。百貨店として(解雇された)従業員も再雇用していただければありがたい」と歓迎。地元メディアも「再生へ」と歓迎ムードに包まれている。

競売になると、マンション事業者が落札する可能性が高いといわれており、今の形で営業を再開するには山形銀が競売を取り下げることが必要だ。佐藤市長は「交渉は民民なので、成立した段階からが行政の出番」と慎重な姿勢も示す。ただ、「交渉の成立後、営業再開をひっくり返すような判断ができるのか」(市の幹部)といった見方もある。元大沼の関係者からは「市長が山形銀の外堀を埋めてくれた」との声も聞かれる。

もっとも、300年以上の歴史があった大沼の再生は混乱続きだった。東京の投資ファンドが創業家から経営を引き継ぎ18年に再出発したものの、19年に従業員が経営権を奪取。山形市の実業家の支援を得て再建を目指したが、落ち込みに歯止めがかからず破綻につながった。

佐藤市長は「昨年実施した市民アンケートで、中心市街地に期待する機能で1位は百貨店だった」と強調する。それでも、百貨店の主要なテナントであった大手アパレルのレナウンが破綻するなど、環境はさらに厳しくなっている。大沼は老朽化など店舗としても課題が山積していた。中心市街地活性化には従来の延長線ではない冷静な判断も必要になる。

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