コロナワクチン、英大学が最大1万人の臨床試験を開始

BP速報
2020/5/28 17:30
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各国で新型コロナウイルスのワクチン開発が進められている=ロイター

各国で新型コロナウイルスのワクチン開発が進められている=ロイター

日経バイオテク

英オックスフォード大学は、新型コロナウイルス感染症に対する予防ワクチンの第2相と第3相の臨床試験を開始すると22日に発表した。幅広い年齢幅を網羅する最大1万260人の登録を目標とし、英国内の提携機関と協力して行う。

このワクチンは同大学ジェンナー研究所が開発したもの。新型コロナウイルスがヒト細胞へ感染する際に足掛かりとするスパイクタンパク質の遺伝子配列を改変し、ワクチンベクター(遺伝子の運び手)として用いるアデノウイルスに導入した組み換えウイルスワクチンだ。

このワクチンの設計には1月10日に着手し、4月末に第1相試験を開始していた。その間、ワクチンの安全性とサルでの免疫応答を確認するなど、候補ワクチンとしての妥当性を示すエビデンス(科学的根拠)を蓄積してきた。並行して、オックスフォード大は英製薬大手のアストラゼネカと契約し、今後の大規模臨床開発の計画と実用化に対応する量産に関して具体的な方針を協議している。

4月から実施している第1相試験では、1000人以上の健康な成人への投与が完了し、ワクチンの評価を続けている。第2相試験では対象者の年齢幅を56歳以上にも拡大し、5歳から12歳の小児も対象とする。それぞれの年齢層に分けて評価し、相違の有無を調べる。

第3相試験では、18歳以上の人を多数登録する予定。より大規模な集団における免疫応答を評価し、新型コロナウイルス感染症に対する予防効果を検証する。第2相と第3相試験に登録する成人はワクチンを接種する群、あるいは効果を比較するために髄膜炎菌ワクチンを接種する群(対照群)にランダムに割り当てる。

髄膜炎菌ワクチンを用いるのは、副反応を特に起こさない生理食塩水では、腕の痛み、頭痛、発熱といった副反応が現れた時、どちらを接種したかを教えられていなくても予防ワクチンを投与されたことに気づく可能性があると予想されるからだ。

臨床試験の実施者らは、どちらを接種されたかを知らない状態(盲検状態)を維持することを重視している。これは、盲検状態でなくなれば対象者の日常行動に何らかの影響が及び、結果として試験データにバイアス(偏り)が生じる可能性を警戒しているため。

髄膜炎菌ワクチンは2015年から英国の10代を対象として髄膜炎の予防接種プログラムに承認されており、旅行者ワクチンとしても用いられ、副反応など安全性は検証済みだ。

第2相と第3相試験は、オックスフォード大のウェブサイトに掲載されている試験実施機関で、5月から6月にかけて投与が行われる。

予防ワクチンの投与後は、一部の対象者は7日間の自覚症状を電子日記に記録し、具合の悪い状態を自覚した人は3週間にわたり記録を継続する。また、それとは別に週1回、対象者に家族など同居人が新型コロナウイルス感染症の感染可能性があったかどうかについての調査に回答するよう求める。

症状がない場合は、新型コロナウイルス感染症への暴露状態をモニターする目的で、一部の対象者には自己採取した鼻咽頭などの拭い液の送付を依頼し、その検体のウイルス検査を実施する計画だ。

ワクチン投与後の一定期間内に診察を受けることも依頼する。その際は健康状態をみるとともに、ワクチンに対する免疫応答を評価するために採血し、電子日記を評価する。試験期間中に対象者が新型コロナウイルス感染症を発症した場合は専門医に紹介し、重症化している場合は連携する専門病院に治療を要請する。

開発中のワクチンの予防効果を解析するためには、対象者のうちの少数でも新型コロナウイルス感染症を発症することが前提となる。解析に必要な感染者数を確保するまでの時間は、ウイルスの感染力に左右される。感染力が高い場合には、ワクチンに効果があれば数カ月で十分なデータを収集することができるが、感染力が低下していけば最長で6カ月を要する、と臨床試験の実施者らは予測している。そのため、感染者との直接の接触機会が多い最前線の医療従事者や公的機関の職員などを優先的に臨床試験に登録し、できる限り速やかにデータを得たいとしている。

開発中のワクチンの予防効果が証明できない場合は、実施者らはそれまでの試験の過程を分析し、投与回数の変更など新たなアプローチを試みる。場合によっては、ワクチンの開発プログラムを中止する可能性もある。

(ライター 川又総江)

[日経バイオテクオンライン 2020年5月28日掲載]

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