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失業給付が離職生む? 米、雇用悪化に政策の死角

(更新)

【ワシントン=河浪武史】米経済は5月の失業率が20%に達すると予測され、1930年代の大恐慌時並みの厳しさだ。新型コロナウイルスによる急激な景気悪化が理由だが、米連邦準備理事会(FRB)には「連邦政府の失業給付が寛大すぎて、かえって労働者の離職を招いている」との報告も上がる。潤沢な資金供給が失業を増やす仕組みとは何なのか。

米失業率は4月時点で既に14.7%と戦後最悪だ。FRBが27日発表した12地区連銀の経済報告(ベージュブック)でも「大半の地区で雇用が急激に失われた」と総括。飲食や旅行サービスだけでなく、製造業なども受注減で人員カットに動いていると指摘した。ただ、シカゴ連銀やリッチモンド連銀などからは「失業給付の気前の良さ」が労働者の離職を促している可能性が指摘された。

連邦政府は3月下旬に決めた2.2兆ドル(約240兆ドル)の経済対策で、失業給付を積み増している。州による通常の給付額に加え、週600ドルを連邦政府が加算する仕組みだ。米労働省の調査ではコロナ危機前の失業給付は平均で週380ドル。これが980ドルに跳ね上がる計算だ。1カ月で約4000ドルの給付を得ることになり、当面の資金繰り不安は和らぐ。

連邦政府の失業給付の増額は、家賃やローンなどの支払いが滞らないようにするためだ。FRBの調査では、中間層の3割は「400ドルの緊急の出費を賄えない」という。低・中所得層には大人1人に最大1200ドル、子供1人に500ドルの現金給付も実行し、資金繰り破綻を防いできた。

もっとも、FRBの報告書では「失業給付の寛大さによって、離職者が職場復帰をためらっている」(ニューヨーク連銀)との指摘も出てきた。5月下旬までに全50州が外出制限の一部緩和を断行し、企業も再雇用に踏み出しつつある。潤沢な失業給付を上回る給与を提示しなければ、生活者は復職しにくい。

コロナ危機前の労働者の週あたり賃金は、平均で981ドルだった。まさに連邦政府の加算後の失業給付と同水準だ。ただ、失業者が圧倒的に多い「レジャー・接客業」でみると、同434ドルと失業給付を大きく下回る。小売業も同619ドルと、失業給付を受けた方が収入が増える生活者が多数いるとみられる。

失業給付の積み増しは7月末までの時限措置だ。野党・民主党は早くも延長を求める一方、トランプ政権には「新たな経済対策に週600ドルの加算措置が含まれるとは、率直に考えていない」(クドロー国家経済会議委員長)と打ち切り論が浮かんでいる。手厚い失業給付は個人消費の失速を避ける重要な政策だけに、追加の経済対策論の大きな争点になりそうだ。

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