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米経済「急激に悪化」 FRB、失業給付が再雇用の妨げも

(更新)

【ワシントン=河浪武史】米連邦準備理事会(FRB)は27日発表した地区連銀経済報告(ベージュブック)で、米経済は「新型コロナウイルスによって、大半の地域で急激に悪化している」と総括判断した。5月は失業率が20%を超える可能性もあり、各地区とも雇用情勢の悪さを指摘した。ただ、連邦政府の潤沢な失業給付が「かえって再雇用の障害になる」などとの指摘も目立った。

4月上旬から5月中旬までの経済情勢を、12地区連銀がそれぞれ報告した。同期間は新型コロナで経済活動を大幅に制限しており、総括では「レジャー・接客業は厳しい状況に置かれ、旅行サービスはほとんど活動がない」とした。自動車販売も大幅に減少し、各地区とも「製造活動が急落した」と指摘した。

もっとも厳しい報告が上がったのは雇用情勢だ。ダラス連銀はテキサス州の400社を調査したところ「47%が従業員の一時解雇や恒久解雇に踏み切った」という。フィラデルフィア連銀も「4月中旬までに5割超の企業が雇用を減らした」と報告。同地区では製造業の3分の1が、30%を超す売り上げ減に見舞われているという。

5月は失業率が20%に達する可能性があり、大恐慌時並みの厳しさとなる。パウエルFRB議長は7月以降に失業率は持ち直しに転じると予測するが、焦点はその回復スピードだ。ニューヨーク連銀は「多くの企業が解雇は一時的で、再雇用を予想している」と指摘するが、クリーブランド連銀は「従業員を減らした企業のうち、営業再開後に雇用を元のレベル近くに戻す予定なのは3分の1だけ」と悲観的だ。

雇用回復を阻むのは、新型コロナの感染リスクが完全に拭えたわけではないためだ。飲食店は営業再開後も客同士の距離を空ける「ソーシャル・ディスタンシング」を求められるが、ボストン連銀は「飲食店の供給能力の35~45%しか発揮できず、採算が合わない」と断じる。学校の再開も遅れており「子供のケアで職場復帰できない従業員が多い」(リッチモンド連銀)との指摘もある。

多くの連銀から挙がったのは、失業給付の潤沢さが、かえって離職を招いているとの指摘だ。連邦政府は3月末に決めた2.2兆ドル(約236兆円)の経済対策で、失業給付を通常より週600ドル積み増す特例措置を発動している。

そのため、失業者は当面は手元資金の不安がなくなり「職場復帰をためらっている」(ニューヨーク連銀)という。シカゴ連銀も管轄区内の企業が「寛大な失業給付を上回るような給与を支払うのが難しい」と指摘し、従業員の再雇用の妨げになるとみている。

同報告書は6月8~9日の米連邦公開市場委員会(FOMC)の討議資料となる。FRBは関連法で「雇用の最大化」を政策遂行の使命と定められており、追加の資金供給策などの議論に入る。

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