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日立金属、難路の独り立ち 品質不正で社長引責辞任

2020/5/27 22:11
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電気自動車のモーターに使うレアアース磁石は業績悪化の要因となった

電気自動車のモーターに使うレアアース磁石は業績悪化の要因となった

日立金属は27日、佐藤光司社長兼最高執行責任者(COO)が退任し、親会社の日立製作所出身の西山光秋会長兼最高経営責任者(CEO)が6月から社長を兼任すると発表した。佐藤氏は4月に公表した品質検査の不正問題を受け、5月末で引責辞任する。2020年3月期は過去最大の連結最終赤字で、業績回復の道筋も見えない。日立はグループの子会社の整理に取り組んでおり、日立金属株の売却も視野に入れるが「独り立ち」は難路となっている。

「事実関係や発生原因の究明で、客観性と公正性を担保するため新体制が必要だと判断した」。27日に電話会議で開いた決算会見で、西山氏は品質不正問題が社長交代の理由だと明かした。同氏は4月に日立本体から送りこまれたばかりだが、一気に全権を掌握する。

20年3月期の連結決算(国際会計基準)は、最終損益が376億円の赤字(前の期は313億円の黒字)だった。世界景気の減速で工具鋼や鋳物など自動車関連部材の販売が落ち込んだ。モーター材料を含む磁石関連事業で減損損失を計上したのも響いた。21年3月期も120億円の最終赤字を見込む。

厳しい状況に追い打ちをかけるのが品質検査の不正問題だ。過去10年以上、特殊鋼や磁性材料の国内外の拠点で検査データの書き換えなどを続けていたことが発覚。調査中のため業績見通しには影響を織り込んでいない。弁護士らで構成する調査委員会が「数カ月で調査する」(西山氏)が、追加の不正が明るみに出る懸念も「まだある」と日立金属幹部は話す。信頼回復に時間がかかれば取引先を失いかねない。

17年から18年にかけて素材メーカーなどで品質不正問題が相次いだ際、日立はグループ企業も含めて品質管理の再徹底を求めた。ただ、18年6月には傘下の日立化成でも不正が発覚。日立の中西宏明会長は同年11月の記者会見で「日立化成は独立したマネジメントがある。ああしろ、こうしろという立場にはない」と突き放した。

経団連会長でもあった中西氏は、経団連の加盟企業の検査不正問題をあぶりだそうとしていたが、身内でも不正が発覚し不快感を示していたという。日立は当時、化成に51%出資していた。日立金属にも約53%出資している。複数回にわたり不正が判明しており、グループ全体のガバナンス(企業統治)が問われてもおかしくない。

日立金属の株価は19年4月に佐藤氏が社長に就いて以降、構造改革への期待などから一時は持ち直し基調にあった。日立が日立金属株を売るとの観測もあり、売り先がTOB(株式公開買い付け)する際にプレミアムがつくとの期待から、投資家の先回り買いの材料となった。ただ、新型コロナウイルスで業績への不透明感が嫌気されて株価は急落。検査不正などもあってやや上値が重い。

日立は09年3月末に22社あった上場子会社の整理を進め、現在残るのは金属と日立建機の2社だけだ。売却などで切り出すか、完全子会社化で取り込むかといった判断の基準では、7~8%の営業利益率を確保できるかが重視されている。西山氏は日立金属が不正を続けた背景について「高い収益へのプレッシャーがどれだけ影響しているかは分からない」と4月に話したが、無関係とは言えなさそうだ。

1956年に日立本体から分離・独立した日立金属は、化成、日立電線とならびグループの「御三家」と呼ばれてきた。金属と電線は13年7月に合併して今の日立金属となり、20年4月には日立が化成株を昭和電工に売却。本来なら「最後の御三家」である日立金属は早期の独立を目指すとみられるが、その行方は品質不正と新型コロナで見通しにくくなっている。

西山 光秋氏(にしやま・みつあき)79年(昭54年)東北大経卒、日立製作所入社。15年執行役常務、16年執行役専務。20年4月日立金属執行役会長兼CEO。宮城県出身。63歳

(湯前宗太郎、森国司)

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