EU経済再生に89兆円基金案 欧州委、南北対立で難航も

2020/5/27 21:11 (2020/5/28 1:31更新)
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フォンデアライエン欧州委員長(右)は復興計画案を議会で説明した(27日、ブリュッセル)=ロイター

フォンデアライエン欧州委員長(右)は復興計画案を議会で説明した(27日、ブリュッセル)=ロイター

【ブリュッセル=竹内康雄】欧州連合(EU)の欧州委員会は27日、新型コロナウイルスの影響で落ち込んだ経済の復興計画案を公表した。新たに補助金と融資からなる7500億ユーロ(約89兆円)の基金を創設する。すでに合意した支援策と合わせ、総額は1.85兆ユーロ規模になる。基金にはオランダなどが反対しており、危機克服に向けてEUが団結できるかの試金石となる。

計画案は復興基金が核となり、18日に仏独首脳が合意した提案におおむね沿った内容だ。EUが5千億ユーロ分の債券を発行して市場からお金を調達し、被害が大きいイタリアなど南欧に回す。補助金となるため、返済の必要はない。欧州委はこれに2500億ユーロの融資枠を設ける案を加えた。

基金は2021~27年のEUの中期予算に組み込むため、実際にお金が届くのは21年からとなる。年内は緊急対応として合意済みの5400億ユーロの対策で雇用維持や企業の資金繰りを後押しする。このほか、これまでの環境政策や地域振興策も復興計画の一部とした。

フォンデアライエン欧州委員長は27日の声明で「復興計画は経済の回復だけでなく将来に投資することで、我々が直面する困難を機会に変える」と述べ、環境やデジタルといった成長分野に投資する考えを表明した。

今回の債券はコロナ対応に限った一時的な措置で「ユーロ共同債」との表現は使っていないが、大規模な共通債券の発行は初めてとなる。これまで慎重だったドイツが容認し、EUの中核国として南欧支援に乗り出す姿勢に転じた。共通債券の発行が実現すれば「財政共通化の一歩」(仏ソシエテ・ジェネラル)と評価する声もある。

復興計画は全加盟国の同意が必要となる。欧州委は基金について6月11日のユーロ圏財務相会合で大筋で合意し、同18日のEU首脳会議で承認する青写真を描くが、財政規律を重視する「倹約4カ国」(オランダ、オーストリア、デンマーク、スウェーデン)は23日、反対を表明した。

「債務の共通化やEU予算の大幅な増額につながるあらゆる手段に同意できない」と補助金ではなく、返済が前提の融資でのみ支援を実施すべきだと訴えた。

共通債務は財政に余裕がある北部欧州が南欧の借金を肩代わりする面があり、有権者の理解を得にくい。オランダのルッテ首相は26日、「我々は(計画は)融資からなるべきだと信じている」と強調した。EUは全加盟国の同意を得ながら、大胆な景気対策をまとめる難題に挑むことになる。

市場から調達した資金をどう返すのかも定まっていない。欧州委によると、債券の償還期間は30年を想定する。償還には加盟国によるEU予算への拠出額を増やすのに加え、デジタル課税や排出量取引制度の対象拡大などEU独自の新規財源を確保する案が出ている。

ユーロ圏の実質成長率は20年に前年比7.7%マイナスに沈んだ後、21年は6.3%のプラスに転じると、欧州委は予測する。EUの意思決定は賛成派と反対派の中間をとりながら合意形成することが多く、景気対策が中途半端になれば、反転シナリオにも影を落としかねない。

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