建設大手4社、前期は増収もコロナで深まる懸念

2020/5/27 20:46
保存
共有
印刷
その他

連結売上高が1兆円を超える上場建設大手4社の2020年3月期連結決算は今夏に予定されていた東京五輪・パラリンピック関連の大型工事などが完工し、全社が増収を確保した。一方で21年3月期は新型コロナウイルスなどの影響で不透明感が強く、清水建設大林組が予想の公表を見送った。各社は顕在化していないリスクを慎重に見極めようとしている。

前期は五輪関連施設の竣工が相次いだ(国立競技場)

各社の今期業績の予想姿勢は分かれた。公表したのは大成建設鹿島だ。大成建設はコロナが「売上高を約20%下押しする」(桜井滋之副社長)とみる。売上高は前期比17.2%減の1兆4500億円、営業利益は51.7%減の810億円を見込む。具体的な減収要因は顕在化していないが、工事受注の遅れやコロナの第2波、第3波などによる工事の中断といった事態を想定している。

鹿島は現時点で明らかになっている影響だけを反映させ、売上高を7%減の1兆8700億円、営業利益を15.9%減の1110億円と予想している。一方で清水建設と大林組はコロナの影響を「合理的に算定できない」(大林組)との理由で、公表を見送った。

各社が懸念するのは工事受注への影響だ。「すでに前期末の段階で、新型コロナによる受注交渉の停滞で今期にずれ込んだものがあった」(大成建設)。建設会社は工事進行基準を採用しており、工事が完了しなくても工事の進捗に応じて業績に反映していく。ただし受注が遅れると着工も遅れるため、計上のタイミングが来期にずれ込む可能性がある。鹿島も「数は多くないが、今期に受注して着工する予定だった案件の受注が遅れたケースがある」という。

大きな要因はテレワークの浸透だ。清水建設の山口充穂経理部長は「得意先などにリモートワークが広がって対面ができず、今後の受注動向が見えない」と明かす。

今後は「コロナ不況」で企業の投資意欲が落ち込み、メーカーやホテルの設備投資などが変更になる懸念もある。実際に「設備投資計画の延期や見直しは若干出てきている」(清水建設の山口氏)。今後の大型案件に計画の遅延などがないか、各社が注視している。

民間投資の動向は建設会社の業績を大きく左右する。日本建設業連合会の統計によれば19年度実績で建設会社が国内で受注した工事の7割以上が民間発注で、不動産業は21%、サービス業は13%を占める。大型商業施設などの建設計画が見直されれば打撃は大きい。

不安は海外にもある。欧米や東南アジアなどではコロナの感染拡大を防ぐ都市封鎖(ロックダウン)が広がった。国内ゼネコンは海外事業の拡大を急いでいたが「待った」がかかった格好だ。

大林組の小寺康雄副社長は「サンフランシスコとニューヨークのロックダウンで公共工事を除いて中断した」と語る。米国では徐々に工事が再開しているが「シンガポールでは4月から中断が継続している」という。

20年3月期までは好調だった。東京五輪のメイン会場となる予定の国立競技場や有明体操競技場、東京アクアティクスセンターなど五輪関連の大型施設が相次いで完工し、業績を押し上げた。

さらに東京五輪の開幕までの完成を目指したホテルや商業施設など広い意味の「五輪関連需要」もあった。1月には東京都港区で地上36階、地下3階建ての複合ビル「虎ノ門ヒルズビジネスタワー」ができた。渋谷駅周辺でも「渋谷スクランブルスクエア」や「渋谷ソラスタ」が完成した。

東京都港区のオークラ東京は改装工事が終わり、19年9月にオープンした。このほか首都圏や関西などで相次ぎ大型ホテルが開業している。

東京五輪の開催が決まると企業の投資意欲は急速に高まった。大型工事は売上高が大きい一方で受注競争も厳しく、利益率が低くなりやすい。それでも建設会社が複数の大型工事を受注し手持ち工事を増やせば、他では利益率の高い案件を選んで受注する余裕が生まれる。各社の施工能力を上回る需要が発生し、利益を確保しやすかった。

20年の事業環境を警戒する声は以前からあった。鹿島の押味至一社長は「20年度は踊り場の年になる」と売り上げの減少を予測していた。大型工事の多くは完成し、20年中の完成工事高が減るためだ。ただし当初計画されていた「五輪後」でも首都圏を中心に複数の超大型再開発の計画が公表されていた。「20年代後半までは大型工事が十分にある」との楽観論が強かったことも事実だ。

建設会社の業績変化は景気動向の変動から遅れる傾向がある。大型工事では受注から完成まで数年かかり、受注が減っても売り上げや利益として計上するまでにタイムラグが存在するからだ。

建設会社の顧客にあたる不動産各社は新型コロナの影響を受け、軒並み今期は減収減益になると予想している。商業施設の不振などが背景にある。不動産不況が表面化すれば、建設各社にとっても大きな試練となる。様々な不確定要素を抱える年になりそうだ。

(桜井豪)

保存
共有
印刷
その他

関連企業・業界 日経会社情報DIGITAL

電子版トップ



[PR]