日産・ルノー・三菱自連合、追い込まれて再結束 コロナ危機で

日産の選択
2020/5/27 21:00 (2020/5/28 5:13更新)
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日産自動車と仏ルノー、三菱自動車の3社連合は開発や生産など分野ごとに役割を分担し、一体で経営を再建する。日産とルノーは資本関係などを巡って対立してきたが、新型コロナウイルスの感染拡大による需要の急減で追い込まれ、再結束せざるを得なくなった。ただ、次世代車の開発や業界再編などでトヨタ自動車や独フォルクスワーゲン(VW)などの競合と差がついており、周回遅れを取り戻すのは容易ではない。

「提携の結びつきは強くなっている。それぞれの資産の強みを最大限に引き出す」。オンラインを通じて記者会見したルノーのジャンドミニク・スナール会長は日仏連合の今後の経営方針をこう強調した。日産の内田誠社長兼最高経営責任者(CEO)も「企業連合は各社のコスト削減などに貢献し、成長を支える役目を果たす」と応じた。

新たな経営計画は3社で分業を徹底することが柱だ。次世代車の分野では自動運転につながる運転支援技術を日産が、インターネットとつながる車はルノーが開発を主導する。生産面では日産がインドネシアで乗用車の生産をやめ、三菱自に乗用車の生産を委託する。フィリピンでも三菱自が日産車の生産を請け負い、オーストラリアやニュージーランドでは三菱自がルノーの商用車の生産も受託する。

部品の共通化も進める。3社は現在、車の土台となる車台の約4割を共通にしているが、24年までに8割まで高める。南米ではルノーと日産でそれぞれ2種類ある車台を1種類に集約する。車台を共通化すると互いの工場で生産委託しやすくなるため、将来の効率化をにらんだ布石だ。

かつて海外企業同士の提携の手本とされた日仏連合だが、綻びが出たのは2018年11月の3社の元会長、カルロス・ゴーン被告の逮捕だ。扇の要を失ったことで日産とルノーの主導権争いが表面化し、両社の新たな協業は事実上ストップした。ルノーが筆頭株主の仏政府の意向を受けて19年4月、日産に経営統合を打診したことで対立は決定的になった。

その日仏連合が再び結束せざるを得なくなったのは業績の急速な悪化とコロナ危機だ。ゴーン被告が進めた新興国を中心とした拡大戦略が行き詰まり、3社は19年度の最終損益がそろって赤字に陥った。コロナ危機で3月の世界販売台数は日産が前年同月比43%、ルノーは47%、三菱自は47%それぞれ減った。世界中の工場が一斉に停止し、もはや日産とルノーが内輪もめをしている余裕はなくなった。

実際、今回の計画の柱の一つである相互の生産委託を俎上(そじょう)に載せたのは新型コロナの感染拡大が本格化した3月上旬、パリで開いた3社の首脳会議だ。

各社の持ち回りで開く首脳会議はその後、渡航規制で顔を合わせることはできなくなったが、5月に入ってからは毎日のように3社首脳が電話会議を重ねて詳細を詰めた。ある日産幹部は「感染拡大による需要減で危機感をもって頻繁にやり取りするようになった」と明かす。

ゴーン被告の逮捕後の混乱で日仏連合が時間を空費する間、世界の自動車大手は再編を加速している。欧米フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)と仏グループPSAは経営統合を決めた。トヨタはスズキに出資し、SUBARU(スバル)も持ち分法適用会社にして「日の丸連合」づくりを急ぐ。

次世代車の基幹技術では米アルファベット傘下のウェイモなどIT(情報技術)大手が先行しており、日仏連合は今や世界の自動車業界で周回遅れになっていた。市場の評価は正直だ。18年末と比べた直近の時価総額はトヨタが4%増え、VWが1%減ったのに対して日仏連合は3社合算で約6割も減った。3社で最も時価総額が大きい日産(約1兆7000億円)でもトヨタの13分の1だ。

「ルノーの消滅もあり得る」。ルメール仏経済・財務相は5月下旬、仏メディアにこう語って危機感をあらわにした。一方、27日の会見で3社の首脳からは危機感が透ける言葉は見当たらなかった。新たな経営計画で「ゴーン後」の進路は定まった。土俵際まで追い込まれた日仏連合に内輪もめをしている時間はもう残されていない。(小泉裕之)

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