コロナ禍で注目の自転車通勤 グラベルバイクで快適に

新型コロナウイルスの感染を防ぐための手段として「自転車通勤」が注目されています。厚生労働省の「新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針」(令和2年5月25日変更)でも、在宅勤務や時差出勤とともに自転車通勤も人との接触を低減する取り組みとして推進されています。
これまで電車やバスで通っていた長い距離をすべて自転車で走行するとなると、それなりの性能を持つモデルが欲しいところ。そこでおすすめしたいのが「グラベルバイク」というカテゴリーの自転車です。
グラベルバイクはここ数年で普及したカテゴリーなので、聞きなれない人もいると思います。そのコンセプトを簡単にいえば「未舗装路も走行できるロードバイク」です。もともとは未舗装箇所が多いヨーロッパやアメリカといった大陸の道をツーリング、またはロングライドすることを想定して生まれた自転車です。車で例えるなら多目的スポーツ車(SUV)のような自転車とイメージしてください。
具体的には、ドロップハンドルに太めのタイヤ&ディスクブレーキを組み合わせているところが大きなポイントです。
高速で走行すると人と自転車が受ける空気抵抗によって速度と体力を奪われますが、ドロップハンドルは深い前傾姿勢をとることでそれを低減できるメリットがあります。また、握る場所を変えることで平らな場所や上り坂などの状況に応じた適切な乗車姿勢をとることができ、長時間でも快適に走行することが可能です。
太めのタイヤは細いタイヤと比べて接地面積が大きく、未舗装路や雨天のアスファルトなどでもしっかりグリップするほか、乗り心地に優れ、パンクしにくいのが強みです。とくに街中走行では、交通事情によってやむなく車道から歩道へ上がらなければならないケースが多々あります。タイヤが太いと段差を安定して乗り越えることができるので安全性にも寄与します。
また、ロードバイク用の細身の高圧タイヤは空気が抜けやすく、まめに充填しないとパンクのリスクが高まりますが、太めのタイヤはそこまでシビアに空気圧を管理する必要もありません。グラベルバイクは車体各部にキャリアや泥よけといったアクセサリーを取り付けるための台座が装備されているので、ライフスタイルに応じてカスタマイズできるのも特徴です。
絶対的な速さではロードバイクに一歩譲るものの、ラフに扱え、幅広いシチュエーションを受け止める懐の深さがグラベルバイクの魅力。例えば、都市部の道を片道15キロ以上も走って通勤するといったケースでは、まさにぴったりなチョイスだと思います。
今回の記事では、グラベルバイクの中でもエントリーモデルにあたる10万~15万円で手に入れられるモデルをピックアップしてご紹介します。
ロングやハードなライドにも対応

数日にわたるロングツーリングで使用することも想定したモデル。乗り心地に大きな影響を与えるフレームとフロントフォークはいずれもクロモリ製。丈夫なことに加え、段差や舗装の荒れた路面などでの衝撃吸収性が高く、長時間のライドでも疲れにくいのが特徴だ。
ボトルケージなどのアクセサリーを装着するためのマウントが5カ所に設けられているほか、山の斜面を上るハイクアップを含むハードな登坂を想定、フレームの上辺(トップチューブ)には肩で担ぎやすいようシリコンパッドが装備されている。
フレーム:クロモリ
フォーク:クロモリ
変速機:シマノ・アリビオ 2×9速
タイヤサイズ:700x38C
サイズ:46センチ、49センチ、52センチ、54センチ、56センチ
アーバンライド主体の軽量グラベルバイク

軽量なアルミフレームにカーボンフォークを組み合わせ、10.5キロ(56センチサイズ)というロードバイクに迫る車体重量を実現。泥よけやキャリアをスマートに取り付け可能なマウントを装備するほか、チューブレスレディ仕様のタイヤホイールも採用する。タイヤサイズはグラベルバイクの中ではやや細め。ギア比も高速寄りのセッティングなのでタフなオフロードライディングより、通勤などの市街地メインの走行を得意とする。
フレーム:アルミ
フォーク:カーボン
変速機:シマノ・ソラ 2×9速
タイヤサイズ:700x32C
サイズ:44センチ、49センチ、52センチ、54センチ、56センチ、58センチ、61センチ
未舗装路での軽快な操縦性が魅力

軽量アルミフレームにカーボンフォーク、きつい上り坂にも対応するワイドレンジの変速システムを組み合わせる。ホイールベース(前後車輪間の距離)を短くし、マウンテンバイクのようにフロントフォークを寝かせ気味にすることで未舗装路での自由度の高い操縦性を実現している。フレームとタイヤの間隔に余裕があり、700×47Cサイズまでのワイドタイヤに交換することも可能。ハードな未舗装路をガンガン走りたいユーザーにもお薦めの一台。
フレーム:アルミ
フォーク:カーボン
変速機:シマノ・クラリス 2×8速
タイヤサイズ:700x35C
サイズ:44センチ、49センチ、52センチ、54センチ、56センチ、58センチ
リーズナブルながら細部まで手抜かりなし

10万円を切る手ごろな価格ながら車重10.8キロと軽量な車体が特徴。アルミ製のフロントフォークやダウンチューブの裏側にもアクセサリーを装着するためのマウントを設置。自転車各部に荷物を分散して搭載する近年流行のバイクパッキングスタイルのツーリングにも対応できる。フレームサイズが小さなモデルは700Cサイズよりも直径のやや小さな650Bタイヤを標準装備してバランスを調整するなど、細部まで手を抜かない良心的な一台。
フレーム:アルミ
フォーク:アルミ
変速機:シマノ・クラリス 2×8速
タイヤサイズ:650 x 36c (44-48センチサイズ)、700 x 36c (51-61センチサイズ)
サイズ:44センチ、48センチ、51センチ、54センチ、56センチ、58センチ、61センチ(Ano Blackのみ)
MTBに近い足回りを備えたモデル

タフなクロモリ製のフレーム&フォークに27.5インチのMTB(マウンテンバイク)用ブロックタイヤを組み合わせたアドベンチャー色の強いモデル。ギア比もMTB並みにワイドな設定となっているので、シティーライドからアップダウンの激しい日本のトレイル(山道)まで、幅広いシチュエーションに対応する。フレームやフォークの各部にアクセサリー用のマウントを多数装備しており、長距離ツーリング用へのカスタマイズも容易だ。変速はハンドルバー先端のサムシフターで行う。
フレーム:クロモリ
フォーク:クロモリ
変速機:シマノ・デオーレ 3×10速
タイヤサイズ:27.5×2.1
サイズ:45.5センチ(XS)、47.5センチ(S)
安定性に優れ、ツーリングにも向く

トライアスロン競技やロード競技ではおなじみのブランド、フェルトによるグラベルバイク。同ブランドのロードバイクと比べ、強度がアップされたフレームはリアセンター(クランクの中心部分から後輪中心までの距離)を長めに設計し、重い荷物を搭載しても安定した走行を可能としている。リアキャリアや泥よけのほか、ボトルケージなどのアクセサリーを装着するためのマウントも多数設けられている。タイヤサイズは700×40Cとやや太めで、最大700×45Cまでのサイズを装着できる。
フレーム:アルミ
フォーク:カーボン
変速機:シマノ・クラリス 2×8速
タイヤサイズ:700×40C
サイズ:47センチ、51センチ、54センチ、56センチ
タフなクロモリフレーム&フォークを採用

80年代末からロードバイクとMTBの要素をミックスした製品をラインアップする日本のアラヤ。丈夫なクロモリフレーム&フォークに操縦安定性を高める「ハの字」に曲がったフレアドロップハンドルバーを装備するなど、荒れた砂利道もしっかり走れるパッケージングを採用する1台。フロントフォークとダウンチューブ裏にアクセサリーを装着するためのマウントも装備する。
フレーム:クロモリ
フォーク:クロモリ
変速機:シマノ・クラリス 2×8速
タイヤサイズ:700×35C
サイズ:46センチ、50センチ、54センチ
(ライター 佐藤旅宇)
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