京アニ放火殺人、青葉容疑者を逮捕 手続き異例ずくめ
取り調べに制約も

社会・くらし
2020/5/27 8:06 (2020/5/27 20:45更新)
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京都アニメーションのスタジオ(京都市)で2019年7月に起きた放火殺人事件で、京都府警は27日、無職の青葉真司容疑者(42)を殺人容疑などで逮捕した。府警は重いやけどを負った容疑者の容体が安定してきたと判断したが、ほぼ寝たきりの容疑者の逮捕や捜査の手続きは異例ずくめだ。京都府警は取り調べを本格化し、動機など事件の全容解明を目指す。

京アニは「涼宮ハルヒの憂鬱」や「映画 けいおん!」といった若者の青春を描く作品が人気を集め、国内外で高く評価されている。フリーランスが多いとされる業界にあって従業員を長期で雇用し、人材育成にも力を注いで日本のアニメをけん引。アニメーター養成塾の再開や新作映画の制作など再建に向けて歩みを進めている。

「本人の容体が回復しており、勾留に耐えられると判断した」。27日午前11時すぎ、捜査本部がある府警伏見署で記者会見した川瀬敏之捜査1課長は、事件発生から10カ月後で逮捕に踏み切った理由をこう説明した。

逮捕容疑は19年7月18日午前10時半ごろ、京アニの第1スタジオに侵入し、ガソリンをまいて放火。36人を殺害し、34人を殺害しようとするなどした疑い。33人が重軽傷を負った。

青葉真司容疑者=共同

青葉真司容疑者=共同

府警は午前7時すぎ、青葉容疑者の入院先の病院で逮捕状を執行した。府警によると、同容疑者は容疑を認め、「ガソリンを使えば多くの人を殺害できると思い、実行した」と供述。逮捕状を読み上げられると、書面には自ら署名した。これまでに遺族への謝罪の言葉はないという。

捜査関係者によると、青葉容疑者は27日の調べに「京アニに恨みがあった」との趣旨の供述をしたことが判明。同容疑者は事件直後に身柄を確保された際、「小説を盗まれた」と話しており、その後、事件前に複数の小説を京アニに応募していたことも分かっている。京アニ側は青葉容疑者の応募作品と同社作品との類似性を否定しており、府警は慎重に調べる。

今後の取り調べでは、青葉容疑者の動機の解明が焦点となり、供述がカギを握る。同容疑者は会話のやりとりはできるものの、ほぼベッドに寝たきりで、一人で食事や歩行はできない。体調に配慮し、府警や京都地検は異例の刑事手続きで臨んでいる。

放火された京都アニメーションのスタジオ(2019年7月、京都市伏見区)

放火された京都アニメーションのスタジオ(2019年7月、京都市伏見区)

青葉容疑者は27日、入院先の京都市の病院から伏見署までストレッチャーで移動。刑事訴訟法は警察が容疑者を逮捕した場合、48時間以内に検察庁に身柄を送る「送検」を定めているが、今回は京都地検の検察官が伏見署に赴いて逮捕から約3時間後に「送検」の手続きを取った。府警幹部は「身体への負担を考えると何度も移動はできない」と説明する。

刑事訴訟法が送検後の24時間以内と規定する裁判所への勾留請求も、地検が27日中に京都地裁に請求して認められた。通常であれば最寄りの刑事施設になる勾留先も、医療の設備やスタッフが充実しているとして大阪拘置所(大阪市)となった。

府警は拘置所内で青葉容疑者をベッドに寝かせて録音・録画をしながら取り調べる見込みだ。警察庁の指針で原則8時間以内とされる取り調べ時間も限定される可能性が高い。自力での移動ができないため取り調べで身体への負担が生じ、供述の任意性が確保されるのかといった問題もある。府警幹部は「医療体制を整え、容疑者の状態を確認し、負担を与えない範囲で取り調べる」と強調する。

甲南大法科大学院の園田寿教授(刑法)は「容疑者がほぼ寝たきり状態での逮捕は前代未聞。証拠隠滅や逃亡の恐れがあるといえるのか」と疑問を呈する。今後の捜査について「健康状態を考えると取り調べは短時間にせざるを得ない。20日余りの勾留期間内で十分な取り調べは難しく、捜査当局も手探りになるだろう」と話した。

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