ルフトハンザ、独立経営に幕 独政府筆頭株主に

2020/5/26 20:16
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ルフトハンザは再び独政府の影響下に入る(写真は旧デザインを模したルフトハンザの機材)

ルフトハンザは再び独政府の影響下に入る(写真は旧デザインを模したルフトハンザの機材)

【フランクフルト=深尾幸生】独航空大手ルフトハンザがドイツ政府からの支援で経営を立て直す。新型コロナウイルスの感染拡大で厳しくなった資金繰りのため、独政府から総額90億ユーロ(約1兆600億円)の公的支援を受ける。次々と周辺国の航空会社を傘下に収めて欧州最大規模の航空グループになった背景には経営の独立性が欠かせなかった。政府の支援は再建の足かせとなる可能性もある。

「ルフトハンザと納税者のニーズを考慮した非常に良い解決策だ」。ショルツ独財務相は25日、ルフトハンザの支援の枠組みについてこう胸を張った。今回の支援策は独政府直轄の「経済安定化ファンド(WSF)」が「サイレントパーティシペーション」と呼ばれる議決権を持たない方式で57億ユーロの資本を注入するほか、政府が第三者割当増資を3億ユーロで引き受けて議決権の20%を取得する。独政府は筆頭株主となる。政府保証で30億ユーロも借り入れる。

さらに政府は独会社法の規定で重要議案に拒否権を発動できる25%超まで条件次第で議決権を引き上げる権利を持つ。取締役の選任や重要事項の承認を担う監査役会の役員2人も指名し経営に一定程度関与する方針だ。

各国政府が以前から出資する仏蘭エールフランスKLMや北欧のスカンジナビア航空など欧州の競合に対し、ルフトハンザは1997年に完全民営化を果たした。政府から出資を受ける航空会社は世界的にも珍しくない。

だが、ルフトハンザが世界初の航空連合スターアライアンスの立ち上げを主導し、オーストリア航空やスイス国際航空など欧州各国のフラッグキャリアを傘下に収めてこられたのも政府からの独立性が一因だった。

新型コロナが欧米に広がった3月、ルフトハンザは独政府などに資金支援を要請した。3月中旬時点では財務基盤は強固としており、カールステン・シュポア社長は4月初旬に「企業としての独立性は死活問題」と述べて政府からの出資に抵抗していた。だが、4月23日までの約1カ月で18億ユーロがキャッシュアウトし、政府の支援に頼らざる得ない状況に陥った。

公的支援で資金繰りはひと息つくことになるが、再建は難路も予想される。議決権無しの資本への配当として20年と21年に注入額の4%を政府に支払う必要があり、27年までに最大9.5%まで順次増加する。航空需要が23年までコロナ危機以前の水準に戻らないとみられるなかで軽い負担ではない。

ルフトハンザはコロナ危機後を見据え、グループ全体で機体数なら100機、従業員なら全体の約7%にあたる1万人の削減をそれぞれ検討している。だが、雇用の維持などを求める政府の反対が予想されるためこれまでのように押し切れるかも不透明だ。

シュポア社長は先週、コロナ危機の前に保有していた約760機のうち飛ばせるのは22年で560機、23年でも660機にとどまるとの見通しを社内に示した。機体整備の子会社などでも人員削減が必要だと説明する。

そもそも、政府からの支援が実際に受けられるかにも懸念が残る。国による企業の支援については欧州連合(EU)の欧州委員会が承認する必要があるからだ。

独メディアは欧州委が承認の条件として、ハブ空港であるフランクフルトとミュンヘン両空港の発着枠の一部を競合に渡すことを要求していると報じている。独政府は反発しているが、今後もルフトハンザの経営を取り巻く視界不良の状況は続きそうだ。

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