企業間取引、高まるデフレ圧力

2020/5/26 21:25
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コロナ禍による経済活動の停滞が、企業間でやり取りするサービスやモノの価格に色濃く表れてきた。日銀が26日発表した4月の企業向けサービス価格指数は前月から0.8%下がった。下落率は約16年ぶりの大きさ。宿泊や広告、店舗賃貸などの落ち込みが目立つ。企業間取引のデフレ圧力は消費者物価にも波及しかねず、政府・日銀は警戒感を強めている。

企業間のサービス価格の指数(2015年平均=100)は4月の速報値が104.1と、消費増税前の19年9月(102.8)以来の低水準になった。前月比では3カ月ぶりのマイナスで、下落率は04年1月以来の大きさだ。前年同月比(増税影響を除く)の下落率も0.8%と、東日本大震災後の11年7月以来、約9年ぶりの落ち込みとなった。

新型コロナ対策の移動制限で出張需要などが消失した宿泊サービスは値崩れが顕著だ。前年同月比で35.5%も下がり、下落率は2カ月連続で過去最大を更新した。「アパホテル」を運営するアパグループは5月10日から全ホテルでシングル1泊2500円の格安プランを出している。

小売店が臨時休業や時短営業を余儀なくされたことで不動産賃貸も4.1%下落した。広告の価格下落も目立つ。急速な業績悪化に直面する企業のコスト削減意識の高まりで、テレビ広告は25.6%下落。スポーツ中継など大型のイベントが軒並み中止になったことも影響した。

取引価格が上がった分野もある。国際航空貨物輸送は65.9%の大幅な上昇。航空会社が観光客やビジネス客の減少を受け大幅減便に動くなか、経済活動が再開した中国からのマスクなどの輸入が急増したためだ。こうした動きは例外的でサービス取引全体のデフレ圧力は強まっている。

企業間のモノの取引価格を示す企業物価指数も同様の傾向だ。4月は前月比で1.5%下がり、約11年ぶりのマイナス幅となった。原油安の影響を受けやすい「川上」だけではなく、耐久消費財など消費者に近い「川下」の製品にも値下げの動きが広がる。

第一生命経済研究所の藤代宏一氏は「企業間のモノやサービスの値下がりは消費者物価指数(CPI)の下落につながる」と話す。4月のCPI(増税影響・生鮮食品を除く)は前年同月比0.6%下落と3年4カ月ぶりのマイナスに転じた。当面は下落圧力がかかり続ける公算が大きい。

政府は25日に緊急事態宣言を全面解除した。消費などの需要が回復すれば物価の押し上げも見込まれる。実際は「感染再拡大の懸念もあり、すぐにV字回復に向かうわけではない」(日銀幹部)との見方が多い。SMBC日興証券の今村仁美氏は「今年半ばまでは物価の下落基調が続く」とみる。

日銀の黒田東彦総裁は26日の国会答弁で「物価が持続的に下落するデフレに陥るとはみていない」と語った。一方で物価上昇の鈍さを念頭に「コロナの影響が収束して経済が回復していくもとでも、金融緩和を続けていく必要がある」との考えも示した。

西村康稔経済財政・再生相も「物価上昇に向けて政府と日銀で連携する」と重ねて強調する。コロナ対応で大規模な財政・金融政策を矢継ぎ早に講じた政府・日銀に景気や物価を底上げする余力が残されているか、懐疑的な見方もある。

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