スズキ、インド新工場の稼働再延期表明 新型コロナで
スズキは26日、新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受け、インド西部グジャラート州に建設している四輪車の新工場の稼働を再延期すると正式発表した。稼働時期は未定。インドで操業を止めていた四輪車3工場は再開にこぎ着けた。ただ、今後は市場の冷え込みや新型コロナの影響が長期化することも懸念される。足元で生産体制を増強するリスクは大きいと判断した。

「インドでは4月の販売がゼロ。5月も1万台前後だろう。大変な危機と受け止めている」。スズキが26日、電話会議方式で開いた2020年3月期の決算発表で、鈴木修会長は危機感を強調した。
スズキはインドの乗用車市場で5割のシェアを握る。経済の減速で市場の低迷が続くなか、同社は法人税減税を使った値下げや新型車の相次ぐ投入が奏功し、明るい兆しが出ていた。
だが、新型コロナで出ばなをくじかれた。感染拡大を受け、3月下旬に始まったロックダウン(都市封鎖)で、四輪車を生産する3工場は3月23日から操業停止を余儀なくされた。販売店の営業も休止し、20年3月期の販売は前の期比18%減に沈んだ。
足元では生産活動が復調してきた。5月12日に北部ハリヤナ州のマネサール工場を再開して以降、同18日に同州のグルガオン工場、同25日には西部グジャラート州のグジャラート工場を再開。インドの四輪車全工場がようやく再開にこぎ着けた。

とはいえ、工場のフル稼働は程遠い。今後の市場の冷え込みも懸念され、生産を再開しても売り上げを伸ばせるかは不透明だ。「感染流行の第2波、第3波も見込まれ、反転攻勢をかけるのは難しい」(同社首脳)ためだ。
経済減速を背景にした市場低迷を受け、グジャラートに建設している新工場の稼働を4月から7月に3カ月先送りするとしていたが、新型コロナの影響で再延期を余儀なくされた。新工場は同国で8工場目で、稼働すれば同国全体の年間生産能力は25万台増の225万台になる。
鈴木俊宏社長は新型コロナで部品のサプライチェーン(供給網)が打撃を受けて生産が滞ったことを踏まえ、「取引先を分散したり、取引先に工場を分散化してもらったりするといったリスク対策を打っていかなければならない」と話した。
新型コロナの影響で主力市場のインドをはじめ、業績の先行き見通しが不透明なことから、21年3月期の業績予想と次期の中期経営計画の公表も見送った。「現時点でインドの一本足打法だが、このピンチをチャンスに変えられる」と強調した鈴木会長。3月に創立100周年を迎えたスズキはこの試練を乗り越えられるか。経営手腕が問われている。

新型コロナウイルスの感染症法上の分類が2023年5月8日に季節性インフルエンザと同じ「5類」に移行しました。関連ニュースをこちらでまとめてお読みいただけます。
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