自分のお金を「生き金」にする 個別株投資の醍醐味
ろくすけさんの勝てる株式投資入門(4)

株式投資で3億円を超える資産を築き、アーリーリタイアしたブロガーのろくすけさん(ハンドルネーム)。会社員投資家の夢を実現した実在のスゴ腕投資家が、会話形式のフィクションストーリーを通して、株式投資の取り組み方やノウハウをやさしく解説していきます。自ら先生役として登場し、初心者である架空の若者2人に株のイロハを教えていくという筋立てです。一緒に基本を学んでいきましょう!
登場人物



兄のゴローと一緒に、ろくすけさんから株式投資の基本を教わり始めた妹のナナコ。大学の講義で既に関心を深めていて、熱心に質問を投げてくる姿勢に、ろくすけさんも一目置き始めたようです。前回はナナコからの質問で終わっていました。
ろくすけ:ナナコさんが知りたいのは、私がインデックス投資から個別株への投資にシフトした理由だね。その一つは、株価指数に連動することを目指すインデックス型投資信託の成り立ちにある。
前に説明したようにTOPIX(東証株価指数)に連動するタイプなら東証1部の全銘柄、日経平均株価に連動するなら算出に使われている225銘柄を買うことになるよね。その中には、業績が伸びている優良企業の株もあれば、業績が悪化している企業の株もある。いわゆる玉石混交ってやつだ。買うなら、優良企業の株だけを買いたいだろう?

ゴロー:その方が運用成績は良くなりますしね。
ろくすけ:それだけじゃない。優良企業は多くの人々から求められている商品やサービスを提供しているから、利益を十分に確保できる価格を設定できる。だから、業績を伸ばせるんだ。
いわば、価値を生み出し、社会の役に立っている企業というわけだ。買うなら、そうした企業にしたいはずだ。
この観点で、銀行預金についても考えてみよう。私は預金よりも株式投資にお金を回す方が好ましいと考えたから投資を始めたのだが、それは預金の利息がゼロに近く、資産を増やす手段とはならないことだけが理由じゃない。
ナナコ:他にどんな理由があるのですか?
預金が"死に金"になるのを避けたくなった
ろくすけ:銀行は預金で集めたお金を融資や国債の購入などに充てて運用しているのだけど、預金した人はその使い道を自分で選ぶことができないことだ。
預けたお金は、社会での役割が薄れた企業を延命させる融資に回されてしまうかもしれない。あるいは、存在意義が疑問視されるようなインフラ事業に使われてしまうかもしれない。

ゴロー:そうしたことになる可能性は確かに否めませんね。
ろくすけ:自分が懸命に働いて稼いだお金がそうした"死に金"になっているかもしれない。そう考えると、それを避けたいと思った。優良企業の株を自分で選んで買って、投じたお金がその企業の成長を資金面で支える。それが商品やサービスとして形になって多くの人々の役に立ち、社会的な課題の解決にもつながる。このように自分のお金にしっかり意思を込めて、それが巡り巡って"生き金"になるようにしたいと考えたのさ。
ナナコ:それはいい考えですね。私もそうしたいです。自分が働く場所を探す上でも、価値を生み出している企業かどうかをしっかりと意識して臨みたいな。
ろくすけ:最初に話したように、私は業績の拡大が続いて、それに見合う形で値上がりすることが見込まれる会社の株を買っている。それには、その会社がどのように儲けているのか、利益を生み出す仕組みを分析して理解することが欠かせない。そのスキルを身に付けて企業のビジネスを分析する目を養うことは、社会に出て仕事をしていく上でも必ず役に立つよ。
ろくすけ:また、キラリと光る優良企業を自分で見つけ出し、その成長をゆっくりと見守っていく過程が何よりも楽しい。私は株式投資を一生続けたいと考えているよ。
ゴロー:早く僕も投資をしてみたいな。ろくすけさんのように大化けする株の発掘を目指します!
複利で雪だるま式に膨らむ
調子に乗ったゴローを、ろくすけさんはすかさずたしなめます。
ろくすけ:あまり高い目標を掲げるのは禁物だぞ。焦りや欲張った投資につながり、失敗を招くんだ。私の場合は結果として資産が8年で10倍になったけど、目標はいつも「10年で2倍」に置いていた。
ゴロー:10年で2倍かぁ。それを実現するには、毎年どれくらいの運用成績を上げればいいのですか?
ナナコ:えーっと、7%ちょっとかな。投資の元本を2倍に増やすのに必要な年数や利回りを求める「72の法則」を使えばいいんだもの。これも授業で習ったわ。

ろくすけ:正解だ。元本を10年で2倍にするのに必要な利回りは、72÷10=7.2なので、約7%になる。年利8%で運用できた場合は、72÷8=9だから、運用期間は9年に短縮できる。この72の法則は役に立つから、覚えておくといいよ。
ゴロー:年利7%だと10年で70%しか増えないから、170%、つまり1.7倍では?
ろくすけ:1年ごとに得られたリターン(運用益)をそのまま現金として残して、何もしなかったら確かにそうなるね。でも、リターンを再び投資に回した場合は違ってくる。リターンで得たお金をさらに増やそうと考えて、再び投資に振り向ける。これは自然な流れだろう。
ゴロー:そうですね。投資で出た利益を寝かしておいたら、もったいないですから。
ろくすけ:リターンを再投資に回すと、投資のリターンを得るたびに、その分だけ投資の元本が膨らむ形になる。毎年7%ずつ投資でリターンを上げて、元本もそれに応じて7%ずつ増えると考えると、2年目の元本は1×1.07=1.07、3年目の元本は1.07×1.07=1.1449になる。
このように1.07をどんどん掛けていくと、10回目で約2倍になる。年利約7%なら、リターンを再投資することで10年で元本が2倍になるわけだ。得られたリターンを再投資に回せば、リターンが雪だるま式に増えていく。この仕組みを「複利の効果」と呼ぶ。これも覚えておこう。

あと株を購入するには、まとまったお金が要る。通常は1銘柄当たり最低100株は購入しないといけないからね。
前に取り上げたニトリホールディングス(9843)の昨日(2020年5月28日)時点の株価は、1万9355円だった。この銘柄を買うには最低でもいくら必要かな?

ナナコ:1万9355円×100株=193万5500円ですね。
ゴロー:えーっ、そんなお金ありませんよ。まだ入社して1年目ですから。
投信で元手を作る手も
ろくすけ:最初はインデックス型投信に積み立て投資し、100万円の元手を作ることを目指したらどうかな。少子高齢化が進む日本の経済は全体では低迷が否めないから、世界経済の拡大の追い風を受けられる世界全体の株価指数に連動する投信をお薦めするよ。

ろくすけ:最近は100円や1000円といった少額で投信を自動で積み立てるサービスを提供する金融機関が増えている。だから、少ない元手でも株式投資を始めやすくなってもいる。インデックス型投信に積み立て投資をして元手を貯めながら、並行して株式投資の勉強を進めるといい。
ゴロー:本格的に始めるには、道のりが遠いなぁ。でも「複利の効果」を考えると、始めるのは早ければ早いほどいいというのは理解できました。
ナナコ:私は子供の頃からの貯金とバイトで貯めたお金が150万円ほどあるから、すぐに始められるわ。
ゴロー:おまえ、いつの間に。うらやましいなぁ。
(次回に続く)
今回のまとめ
個別株投資なら、良い会社だけを選ぶことも可能になる
[日経マネー2020年7月号の記事を再構成]
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