中国「デジタル人民元」、22年北京冬季五輪までに発行か

習政権
2020/5/26 18:30
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中国ではアプリを介した決済が広く普及する=ロイター

中国ではアプリを介した決済が広く普及する=ロイター

【北京=原田逸策】中国が「デジタル人民元」を2022年2月に北京で開く冬季五輪までに発行する方針であることが26日、わかった。中国人民銀行(中央銀行)の易綱総裁が同日公開した中国メディアのインタビューで、五輪会場で実証実験をしていると明かした。新型コロナウイルスで現金を敬遠する動きが発行に追い風となっており、準備を加速する。

易氏は「広東省深圳、江蘇省蘇州、河北省雄安新区、四川省成都、冬季五輪の会場で利用者を限って実験中」と語った。五輪会場での実験が判明したのは初めて。易氏は「発行に向けた時間表はない」と述べたが、冬季五輪での発行を目指していることがわかった。

デジタル人民元に詳しい国務院(政府)関係者は「年末までに実験結果をまとめ、習近平(シー・ジンピン)指導部が満足すれば来年に発行する。満足しなければ来年さらに実験する」と話す。

新型コロナでもともと利用者が減っていた現金はさらに敬遠される。香港金融管理局の余偉文総裁は4月の討論会で「(決済分野で)科学技術の応用、普及を進めやすくなった」と語った。

デジタル人民元は携帯電話番号にひもづけて発行され、携帯電話にアプリを取り込んで使う。4月には中国のインターネット上でデジタル人民元を表示したとされる携帯電話の写真が出回った。アリババ集団傘下の電子決済サービス「支付宝」(アリペイ)と似ており、QRコードを読み取って決済したり、逆に相手にQRコードやバーコードを表示したりできる。

写真ではアリペイにない「ぶつける」というアイコンがある。これは携帯電話同士をぶつけることで相手に送金できる機能。人民銀行はデジタル人民元を「現金の一種」と位置づけており、現金のように銀行口座を介さずに流通させるのが狙いだ。相手に紙幣を渡せば決済できるのと同じで、携帯電話をぶつければよい。

中国は現金の流通が極端に少なく、地震など災害時に携帯電波が途絶えれば決済もマヒしかねない。デジタル人民元は、携帯の電源さえあればぶつけるだけで決済できるため、災害時にも決済手段として使える。

一方、だれが使ったかわからないという現金の匿名性は制限する。人民銀行デジタル通貨研究所の穆長春所長は昨年11月に「本人確認の度合いに応じて利用額に限度を設ける」と語った。デジタル人民元は携帯電話番号さえあれば使えるが、その場合は小口決済にしか使えない。身分証や銀行カードの写真を送れば利用額が増える。銀行窓口で面談すれば利用制限がなくなる。

デジタル人民元の決済状況から賭博など犯罪が疑われる場合には利用者を特定する。穆氏によると「夜12時以降」「最少取引単位10元」「どんどん金額が増えていきなり決済が途絶える」の特徴があれば、人工知能(AI)で賭博と見破れるという。

発行による副作用もある。デジタル人民元は中央銀行の債務なので、一般の銀行の債務である預金より安全だ。余氏は「金融危機時には預金者が銀行預金を引き出し、デジタル人民元に替えかねない」と語った。地方銀行で預金の取りつけ騒ぎが起きている中国では無視できない問題となる。

すでに中国ではアリペイや騰訊控股(テンセント)系の「微信支付」(ウィーチャットペイ)が普及し、小口決済の大半を占めるが、デジタル人民元は両者と明らかに競合する。デジタル人民元は法定通貨なので、小売店は法律で受け入れを拒めない。民間事業者よりも有利な状況にあるといえ、民業圧迫も起こりかねない。

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